2010年ごろから続く流れの延長線上

 現在発生している供給減少懸念がどこから来たのかを考えます。短中期的な上昇圧力をもたらす材料であるものの、筆者はその種は15年ほど前にまかれたとみています。

図:2010年以降の世界的なリスク拡大と金・原油・株高の背景(筆者イメージ) 

出所:筆者作成

 中東地域もロシアも、西側先進国から見れば非西側です。その非西側とわれわれ西側の間に明確な分断が生じ始めたのが、2010年ごろだったと筆者は考えています。以下の通り、V-Dem研究所(スウェーデン)が公表している、各国の自由や民主度を数値化した「自由民主主義指数」が、明確に2010年ごろに変化が生じたことを示しているためです。

図:自由民主主義指数0.4以下および0.6以上の国の数(1945年~2023年) 

出所:V-Dem研究所のデータを基に筆者作成

 スマホとSNS(交流サイト)の世界的な同時普及、欧州での債務問題や移民問題などによる混乱、リーマンショック後の景気回復・株価上昇を企図して環境問題と人権問題を利用した、西側による正しいことアピールなどは、民主主義の行き詰まりや西側と非西側の分断深化を加速させたと言えます。

 そしてその延長線上に、西側への資源の出し渋りや、ウクライナ戦争やイスラエルとハマスの戦争勃発があり、これらが重なり、原油の供給減少懸念が強まったり、原油の減産が行われたりして、原油価格が高止まりしていると考えられます。

 やはり、OPECプラスは原油価格を上げるためにやみくもに減産をしているなどと、西側の一方的な論理で彼らを指摘することはできないのです。(われわれ西側も原油高の材料を作っている)