上下圧力の板挟み状態の中で原油高

 2021秋年以降、原油相場はおおむね70ドルから95ドルの範囲(レンジ)で動いています。およそ5カ月半ぶりの高値だと報じられている足元の80ドル台後半も、この中にあります。この水準は、2020年のコロナショック発生時の5倍以上、かつコロナショック直前よりも高いことから、足元の原油相場は長期視点の高止まり状態にあると言えます。

 ウクライナ危機が勃発して世界的に需給ひっ迫感が強まった2022年2月からおよそ半年間を除けば、上記のレンジにおおむね収まっています。長期視点のレンジ相場であることは、下落圧力と上昇圧力が長期視点である程度釣り合っていることを意味します。

 下落圧力をもたらす材料は時期によって異なります。例えば、ウクライナ危機勃発からおよそ半年が経過し、下落が始まった時に強く意識された材料は、米国の利上げと中国の景気後退懸念でした。

 米国では三倍速と揶揄(やゆ)された急速な利上げが続いて景気減速懸念が強まり、中国では大規模な不動産会社で財務上の問題が噴出して景気後退懸念が強まりました。足元の下落圧力をもたらす材料は、米国や中国の景気後退懸念です。

図:NY原油先物(日足 終値) 単位:ドル/バレル

出所:Investing.comのデータより筆者作成

 一方で、2021年秋以降、上昇圧力の大勢に大きな変化は見られません。「主要産油国からの供給減少懸念」と「需要増加観測」です。これらをまとめると、次のようになります。