設定水準は日経平均株価7,700円

 一般的に、ノックイン水準は70%から60%あたりの水準で設定することが多いです。当然ノックイン水準が低ければ低いほど元本リスクの可能性は低くなるので投資商品としての期待リターンも低くなります。そこで提案したのが、以下のような仕組債です。

商品名:複数指数参照型変動利付指数連動債
発行体: Barclays Bank PLC
償還期限:5年
参照指数:日経平均株価・S&P500・ユーロストックス50
利払い日:年4回
クーポン:6.35% Or 0.1%(デジタル判定型)
クーポン判定価格:各当初価格の80%
ノックイン判定価格:各当初価格の45%
早期償還判定価格:各当初価格の110%

 一見、複雑に見える商品ですが、I氏のリクエストは「5年という長期間資金を固定してもいいので、リスクが顕在化してしまう水準を、自分の考えで導いた極力低い価格で設定してほしい」という一点につきます。

 その水準が、2015年当時では日経平均株価7,700円でした。7,700円の水準にノックインリスクを設定した商品で仮に年率5%で運用できれば、自分にとっては十分な運用条件だ、という発想で、I氏は1億円をこの商品に投入。2015年後半以降は中国経済の雲行きが急速に怪しくなり、世界の金融情勢も大きく不安定化しましたが、長期的な景気動向に基づくI氏の想定の通り、大幅な景気後退に陥ることはありませんでした。

 世界的な金融緩和と堅調な米国経済に牽引され、株価は上昇傾向へ。I氏が保有した仕組債は株価指数の上昇を受けて満期を待たずに早期償還しましたが、保有した約3年半で2,000万円もの利息収入になりました。

 株価指数は市場全体の動きを表すため、長期的に見て企業業績の動きと対比させやすいのが特徴です。株価指数連動債はリスクに対してリターンのバランスが良い傾向にあり、富裕層の資産運用でこのような株価指数連動債はポピュラーなものになっています。

 もちろん、過去に日経平均株価など株価指数も短期間で大きく下落した局面があるため、決して「安全」というわけではありません。しかし、I氏のように、株価水準の見通しに幅を持たせて想定できるため、「ここまでは下落する可能性は少ないだろう」という水準を自分の中で決めることができるのです。