お金の問題に直接的には関係ないご質問を選びました。

【質問】「子悪党」ってどんな悪党ですか?

 

【回答】「小悪党」とは、単独で光を当てられると矯正される程度の「小心でまじめな悪い人」のことです。




 

 ご質問ありがとうございます。文字は「小悪党」が正しいような気がしますが、大きな問題ではありませんね。私の論説にあって、「小悪党」とその矯正は重要な概念なので、説明したいと思います。

 さて、世の中の特に経済犯罪とされるような事例や、法的に犯罪ではなくても倫理的に明らかに悪い問題にあって、当事者は、主として組織の必要や圧力によって悪事に手を染めています。不正会計、検査データのねつ造、悪い金融商品の販売、などの大半がそうでしょう。現場で悪いことをしている人は、組織が方針を変えたり、あるいは個人として名指しされて悪事を指摘されたりした場合には、悪事から手を引きます。

 これに対して、部下が不正を行って業績の数字を作っていることを知りながら、「自分は現場で何が行われているか知らなかった」などとうそぶく、金融機関の経営者や不正な保険請求を大規模に行った会社の某経営者のごときは「大悪党」だといっていいでしょう。本人が得ている利益から考えても、厳罰に処するべきは明らかにこちらです。

 小悪党は、イメージとしては、石の下などのじめじめした物陰にいてこそこそ何事かをしている虫のような人々です。彼らは物を取り払って太陽の光を当ててしまうとパッと離散して、普通の虫として環境に溶け込みます。

 つまり、小悪党は、(1)悪事が悪事であると指摘し、(2)組織の重石を取り除き、(3)まっとうになれば許してやるよ、と言えば矯正されて、普通の市民として仲間にすることが出来る人たちです。

 子会社の証券会社を使いつつ仕組債を個人に売りつけていた某大手地銀のケースで考えましょう。

 顧客に相対していた子会社の証券マンや顧客と彼らを繋いで制約に向けて圧をかけた銀行員は、仕組債が顧客にとってどれほどひどくて不利益な商品なのか、なるべく考えないようにして、親銀行の方針に従って営業活動に勤しんでいたものと想像されます。

 仮に銀行の経営者に顧客重視の見識があれば仕組債の販売をもっと早くに止めていたでしょうし、そもそも「誰にも適合しない」商品なのですから、金融庁が個人向けの仕組債販売を禁止していれば、現場の人々は仕組債営業に手を染めずに済んだ。つまり、小悪党にならなくてもよかった。

 筆者が時に営業妨害とも思える強い調子でダメな金融商品などを批判することの意図は、顧客投資家の利益のためと同等くらいの重要さで、広い意味では仲間である金融マンを「小悪党」にならずに済むように解放したいということにあります。

 小悪党と呼ばれるに足るような不正行為を私もやったことがありますが、本人は実に嫌なものです。