【質問】
 現在、中堅サラリーマンの女(独身30代後半)です。
 安定を求めて事務職(正社員)を選んで今があるのですが、最近、このままたいして楽しくもない仕事を〇十年も続けなくてはいけないのかと悩んでいます。
 気になることはあるのですが、そちらに進むには0から勉強をし、いい年で経験0で就職活動をしなくてはいけなくなります。(好きそうだけど、才能はなさそうだし、そもそも就職できなさそうと感じている)
 また、現在、履歴書に書けるような資格を1つももっておらず、実務経験もたいしたことがないので、このままの状態での転職も厳しそうだと不安を感じています。でも、いまの仕事を定年までやりたくないし。
 こんな状況からの質問は以下になります。
・生きていくために有用そうな資格(簿記とか)を取るべきか、実るかわからないけど興味がありそうな分野の勉強をすべきか?先生ならどちらをとりますか?(自分の能力的に両方を取るのは難しいと思います。)
・仮に転職できても年収が下がりそうなので、サイドファイヤーを達成しある程度の収入を別で確保できてから、年収が低くてもやりがいのある仕事に就くべきかとも考えているのですが、どう思われますか? サイドファイヤーするなら、何歳までにいくら金融資産を作ればいいとお考えでしょうか?

ご質問に回答します。





 

 仕事が楽しくないという状態が何よりもいけないなあ、と思いながらご質問を拝読しました。

 面白くない仕事は、張り合いもないし、いざという時の頑張りが利きません。すると、他人に対して競争力を持てないので、取り替え可能な労働力として安く買い叩かれます。ますます、つまらなくなる。

 はじめに「安定」だけを指向したことで始まった、職業人生のデフレスパイラルに嵌まっている状況でしょう。

 さて、解決方法を考えましょう。消去法で行きましょうか。

 先ず、資格を取ることに意味はあるでしょうか。端的に言って、資格を持っていても顧客がいなければ食っていけないし、顧客がいるならば資格がなくても食っていくことが出来ます。

 今後年齢を重ねた時に、簿記やFP程度の資格が、再就職に有利に働くとは思えませんし、仮にそれで就職できても、面白い仕事に就くことが出来ないなら、別のデフレスパイラルに乗り換えるだけのことです。

 資格は、営業力があれば持つ意味があるかも知れませんが、それ自体を持つと自分が変わるかも知れないと思うのは勘違いです。士業の日常は、毎日自分を営業するような、言わば毎日就職活動をするような世界だと覚悟すべきでしょう。資格幻想を捨てましょう。

 次に、サイドファイヤーとは、お金を貯めて、投資して、増やして、生活の足しになる収入を生む資産を形成しようという目論見でしょうか。それまで、「年収が低くてもやりがいのある仕事」に就けないとすると、人生の時間の無駄遣いでしょう。

 回答者は、投資のアドバイスなどを生業にしているので、ファイヤーを目指して投資する人が増えると好都合なのですが、生身の人間が、爪にファイアー(火)を灯すようにして、しみったれた生活をして、人生の時間を無駄にするのを見たくはありません。この選択肢も無しです。

 質問者に必要なのは、興味の持てる仕事に直ちに関わる縁を作る積極性です。給料が安くても、弟子入りするつもりで興味のある分野の会社に転職する努力をするとか、その分野のスキルを持っている人を誘って副業としてビジネスを立ち上げるとか、いずれにしてもビジネス上の関わりを先ず持つことを考えるべきでしょう。「スキルを身に付けてから雇って貰う」のは、順序が逆です。多分、効率が悪くて話にならない。

 経済の仕組みを考えると、安定だけを指向するリスクを取らない人が安く働くことで提供する価値を、リスクを取る人が巻き上げる仕組みが、強力な重力のように働いています。

 何はともあれ、先ずは仕事が面白くなくては話になりません。

 幸いにして、質問者は辞めても惜しくないくらいつまらない会社にお勤めなのですから、失敗しても「勿体ない」ということはない。30代と若くて時間があるのですから、何とかなります。

 他人とは異なる「リスクを取る側」に回る工夫を考えてみて下さい。