日本企業今期も増益へ、コアコア・インフレ上昇が追い風

 日本株にようやくインフレの追い風が吹き始めました。総合インフレ率は5月時点で3.2%ですが、コアコア・インフレ率は4.3%まで上昇しました。これが、企業業績・株価に強い追い風になると考えています。

 楽天証券経済研究所では、東証プライム上場3月期決算主要841社の連結純利益が今期(2024年3月期)5.3%の増益になると予想しています。インフレが業績を押し上げる効果が見込めます。

<日本のインフレ率:2023年5月>

種 別 数値 説 明
総合インフレ率 3.2% 消費者物価指数(CPI)
総合指数の前年同月比上昇率
コア・インフレ率 3.2% 生鮮食品を除く
コアCPIの前年同月比上昇率
コアコア・インフレ率 4.3% 生鮮食品およびエネルギーを除く
コアコアCPIの前年同月比上昇率
出所:総務省統計局より楽天証券作成

<日本の総合インフレ率、コアコア・インフレ率推移:2020年1月~2023年5月>

出所:総務省統計局より作成

<東証プライム上場主要841社連結純利益(前期比%)>

決算期 実績/予想 純利益
2020年3月期 実 績 ▲28.7%
2021年3月期 実 績 +23.8%
2022年3月期 実 績 +35.5%
2023年3月期 実 績 +2.8%
2024年3月期 楽天証券予想 +5.3%
出所:楽天証券作成

 日本の企業業績の先行きを考える上で重要なのは、コアコア・インフレ率です。コアコア・インフレ率とは、生鮮食品およびエネルギーを除くCPI(消費者物価指数)の前年比上昇率のことです。日本の企業業績を押し上げる「良いインフレ」と言えます。

 コアコア・インフレは、エネルギー価格の上昇要因を除いて計算しているところが重要です。エネルギー価格の上昇は多くの日本企業にとってコストアップ要因です。エネルギー価格上昇がもたらすインフレは、企業業績にマイナス影響をもたらす「悪いインフレ」です。

 一方、コアコア・インフレは企業収益を直接押し上げる「良いインフレ」です。2022年前半、エネルギー価格上昇主導で総合インフレ率が2%を超えた時点ではまだ、悪いインフレが主体で、良いインフレは低位でした。

 ところが2022年後半になって、やっと日本にも物価上昇の波がやってきました。日本も普通に値上げができる国になってきました。これは、長い年月にわたり、物価下落に苦しんできた日本企業にとって、干天の慈雨です。

 2023年2月から、コアコア・インフレ率が総合インフレ率を上回る「逆転」が起こっています。エネルギー価格が前年同月比でマイナス要因となったためです。エネルギー起因の輸入インフレがマイナスとなる中、国内要因によるコアコア・インフレの上昇は、日本の企業業績にとって理想的です。

 念のため、ここでいう「良いインフレ」「悪いインフレ」は全て、企業業績・株価にとっての議論です。どんなインフレも国民生活にはマイナスなので全てのインフレを「悪いインフレ」という論調がありますが、企業業績を計算する上では、コアコアの上昇は大きなプラス材料です。