ビットコインは世界の流動性のバロメーター
トランプの大統領選挙勝利を受けた米国株式相場は大幅高となり、S&P500種指数、ナスダック100、ダウ工業株30種平均の3指数はそろって最高値を更新した。トランプが減税や経済成長を促す政策を進めるという楽観的な見方が市場を覆っており、金利の上昇や巨大な財政赤字、関税などの負の側面は過剰流動性が覆い隠すことで無視されている。
投資家としては、トランプが何を言っているかではなく、何をしようとしているのか、現実に何ができるのかを冷静に判断する必要があるだろう。
S&P500CFD(日足)
さて、このような楽観相場は今後も続くのであろうか? 株高を延命させるポイントはなにか? そのためにチェックしておくべき市場、懸念材料を以下に述べたい。
株高にとっての懸念材料はインフレである。インフレになれば金融当局が金融緩和に逆戻りしたくても何もできなくなる。そういう意味で最も重要なのは原油価格である。原油価格が上昇すれば全ての物価が上昇する。
現在の原油市場の低迷は、株式市場にとって都合の良い事態となっているが、何かの理由で原油価格が上昇すれば株式市場はタントラム(かんしゃく)を起こす可能性がある。
NY原油CFD(月足)
S&P500CFD(月足)
バイデン大統領が政権をとってから米民主党は借金を50%も増やし、負債と資産を両方膨らませる自作自演相場を続けてきた。イエレン財務長官が民主党の応援で未曽有の国債発行に動いたように、現在の米国は信用主導のサイクルではなく、財政主導のサイクルで動いている。
米国のマネーサプライは8月に21兆1,700億ドルに達し、2023年1月以来の高水準となった。これは米国のマネーサプライが5カ月連続で増加したことを意味する。
米国のマネーサプライ(M2)
米国だけではない。現在、世界のマネーサプライは107兆ドルと過去最高を記録している。世界中、ジャブジャブだ。基本的に現在の株式市場の上昇は、マネーサプライの増加を反映している。
世界の流動性 107兆ドルと過去最高を記録
このような世界の流動性と最も相関が高い市場はビットコイン市場だ。リン・オールデンが指摘しているように、ビットコインは世界の流動性のバロメーターである。ビットコインは世界の流動性と同じ方向に動き(過去12カ月間で83%)、他のどの主要な資産クラスよりも相関関係が高い。
流動性条件の強力なバロメーターとなっている。流動性の変化はビットコインが教えてくれるだろう。
ビットコイン/ドル(月足)
マイクロストラテジー(月足)
日本株はインフレで上げているので円安次第だろう。日本円の崩壊は日本が長年の疑似MMT(現代貨幣理論)という狂った金融政策の代償として支払っているものである。結果、「通貨インフレという詐欺的増税」が到来している。
日経平均CFD(月足)
ドル/円(月足)
ここからの懸念は「2025年の債務上限危機」である。トランプ政権で大規模な減税は確実に行われるだろう。しかし、支出削減の約束は守られない可能性が高い。それは、巨額の財政赤字がさらに急増することを意味する。
現在、米国の巨大な債務の壁が満期を迎えている。発行残高28兆ドルの米国債のうち、これから3年間で米財務省は15.5兆ドルの債務を借り換えなければならない。米国の債務を返済するための利息コストは、ここ数カ月で爆発的に上昇している。
長期金利が急上昇するのを防ぐためFRB(米連邦準備制度理事会)はいずれQE(国債買い入れ)をやることになるだろうが、それはインフレを急上昇させることになるだろう。