コスト・プッシュ・インフレは経済にマイナス

 均等インフレの話をしましたが、現実には、均等に価格が上がるインフレはあり得ません。インフレは常に「価格のねじれ」を伴います。仮にインフレ率が10%だとして、20%価格が上がるものもあれば、3%しか上がらないものもあります。需給ひっ迫しているモノは大きく上がり、余っているものは上がらない「価格のねじれ」が必ず起こります。

 今起こっている、世界のインフレでも、相当大きなねじれが起こっています。エネルギー・穀物などが大きく上昇する一方、エレクトロニクス製品などでは相変わらず値下がりが続いています。

 日本が輸入に頼っている、天然資源の価格上昇は日本にとってコスト・プッシュ・インフレ(コスト押し上げ型インフレ)となり、経済に悪影響があります。ただし、天然資源の価格上昇を起爆剤に、物価全般に上昇機運が出ていることは、長年のデフレに苦しんできた日本企業にとって干天の慈雨です。

 企業業績を拡大させる、ディマンド・プル・インフレ(需要けん引型インフレ)と、資源価格上昇のコスト・プッシュ・インフレの両方が同時に起こっているのが今の日本のインフレです。

 4月時点で日本のコアコア・インフレ率(生鮮食品およびエネルギーを除くインフレ率)は4.1%まで上昇しています。輸入インフレではなく、国内要因のインフレが高まっていることが、日本株に追い風となっています。

▼著者おすすめのバックナンバー

2023年6月6日:日経平均急騰の裏に外国投機筋の買い、裁定残高変化で読み解く
2023年6月5日:日経平均4万円への上昇シナリオ。米景気ハードランディング回避の公算
2023年5月2日:令和の日経平均が4万円を目指すと予想する理由