日本はやっとデフレを脱したところ

 日本のインフレはどうでしょうか。日本のインフレ率はやっと3%を超えてきています。これを「悪いインフレ」という人もいます。国民生活にとってインフレは「悪」です。

 ただし、企業業績・株価を分析する立場からは別の議論があります。企業業績・株価にとっては、長らく待ち望んだ「良いインフレ」がやっと上昇してきたところです。

日本のインフレ率(消費者物価総合指数の前年比上昇率)月次推移:1980~2023年(4月)

出所:総務省統計局データより作成

 上のグラフが、日本のインフレ率推移を表しています。第二次オイルショックの直後の1980年に8%台の高いインフレ率がありましたが、その後急低下。1990年代後半から長いデフレに苦しむことになります。足元では3%を超え、やっとデフレ脱出が見えたところです。

 日本のインフレ率は消費税率引き上げの影響を受けるので、上のグラフを見るときに、少し説明が必要です。消費税率が引き上げられると、消費者物価がその分上昇するのでインフレ率が高くなったように見えます。

 1989年4月~1990年3月は1989年4月の消費税率引き上げの影響で、インフレ率が約3%かさ上げされています。同様に、1997年4月~1998年3月、2014年4月~2015年3月も消費増税の影響でインフレ率がかさ上げされています。2019年10月の消費増税も同様ですが、その影響はかなり小さくなりました。

 消費増税の影響を除外すると、オイルショックが終わった後の日本の消費者物価はほとんど上がらない状態が続いていたことがわかります。消費増税が無かったのに、日本の物価がぐいぐい上がったのは、上のグラフで赤の矢印を付けた2カ所だけです。

 2008年のリーマンショック直前と、2022年だけです。どちらも世界的なインフレ高進の影響を受けて、日本の物価がやっと2%台を回復したところです。

 私は現在の日本のインフレは経済にとって必要な「良いインフレ」と考えています。米国のインフレは景気や株価にマイナスの影響を及ぼす「悪いインフレ」ですが、日本は「良いインフレ」と考えます。念のために申し上げると、どんなインフレも国民生活にとってはマイナスです。

「日本は良いインフレ」と私が言っているのは、あくまでも日本の景気・企業業績への影響のことです。

 近年の日米のインフレ率を評価すると、米国は景気・株価にとって悪いインフレが沈静化してきているところ、日本は景気・株価にとって良いインフレが上昇しているところと考えています。

日米総合インフレ率の比較:2020年1月~2023年4月

出所:総務省・ブルームバーグより作成