「増やす」より「減らさない」ことが重要

 超富裕層にとって、資産はインフレ率に負けず、減らさずに守っていくもの。その目線は先進国のインフレ率からみておおよそ2%です。2%といえば一見「薄利」のように思えます。しかし、この「2%」とは、世界のインフレ率並みかそれ以上で運用しなければ資産の目減りとなってしまう、という認識からはじき出された、いわば富裕層共有の指標。A氏をはじめ、世界の富裕層たちの資産運用は、資産の目減りを防ぎ、次世代に安全に承継していくことが目的。今日明日の利益ではなく、確実な「長期成長投資」が鉄則です。

 この理論でいくと、20年後には全資産は1.5倍になります。A様が保有される資産の1億ドルは、20年後には1.5億ドルに成長します。20年かけて0.5億ドルを着実に積み上げていく。これが超富裕層の長期戦略なのです。

  さらにA氏は、国際分散投資で資産運用するコア資産とは別に、一任契約を結ばずにA氏自身が個別判断で投資するサテライト資産も保有。サテライト資産の運用でコア資産に大きなマイナス影響が及ばないよう、投資額を限定しながら、景気が後退して大きなチャンスが来たと思うようなタイミングでは、信用力の高い金融機関の債券を個別に購入するなどして、アグレッシブな投資も楽しんでいます。

真似できる!富裕層投資戦略

 A氏の投資の極意をまとめると、以下のようなものになります。

 見直しはシビアで短期かつ定期的に。ただし総額の運用自体は長期スパンでキープ路線。キメ細やかに見直しをしながら、一喜一憂せずどっしり構えて運用に臨む。個人投資家もぜひ取り入れたい投資スタイルです。