バフェットのTSMC大量売りでピリつくNY市場

図5 米NYダウ(日足)とMACDの動き(2023年2月17日取引終了時点)

出所:楽天証券WEBサイトを元に筆者作成

 先週末17日(金)のNYダウ(ダウ工業株30種平均)終値は3万3,826ドルでした。

 日経平均やTOPIXと同様に、NYダウも、ここ最近はもみ合いの動きが目立っています。週足ベースでは何気に3週連続で下落していますが、意識されている3万4,000ドルの株価水準からは大きく外れていません。

 株価の下値は50日移動平均線がサポートとなっているほか、上値については、昨年の高値(1月)と安値(10月)を基準としたギャン・アングルの「4×1」ラインが抑えている格好で、値動きの膠着(こうちゃく)感を強めています。

 また、ナスダック(ナスダック総合指数)も1万2,000pの節目が意識される展開が続いています。

図6 ナスダック(日足)とMACDの動き(2023年2月17日取引終了時点)

出所:楽天証券WEBサイトを元に筆者作成

 図6のように、日米の株価指数は節目の株価水準を意識した動きが中心となり、もみ合い継続による市場のエネルギーが蓄積される中、株価が動き出す「次の展開」を探っている状況となっていますが、足元の相場環境をひもとくと、その先行きは依然として不透明です。

 というのも、「インフレ&景況感のスピード感と、金融政策への思惑」という市場の論点自体は変わってはいないのですが、最近までの株高の前提となっていた「早期の段階で、そこそこの景気後退とFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ転換」期待に揺らぎが生じているからです。

 冒頭でも、CPIや小売売上高、PPIといった、1月分の米国の経済指標について言及しましたが、最近発表された米経済指標の結果は、「インフレは鈍化傾向が続いているものの、鈍化のペースは緩慢」、「景況感は想定以上に強い」ものが多くなっており、米金融政策引き締めの長期化観測が再浮上しています。

 それでも、景況感の強さそのものを好感する買いや、テクニカル分析的には、これまで見てきたように、株価のもみ合いを続ける中で移動平均線の位置が改善するなど、相場が崩れそうなムードでもなく、次回のFOMC(米連邦公開市場委員会)まで時間がある中、景気の強さを背景にした買いで、株価は一時的に上値をトライする場面もありそうです。

 今週は比較的イベントが少ないですが、米国では小売りのウォルマートや、半導体関連のエヌビディア(NVDA)の決算が控えているほか、国内では日本銀行総裁・副総裁の後任候補の所信聴取が 衆院議院運営委員会で予定されています。また、今週はロシアによるウクライナ侵攻開始から1年という区切りも迎えます。

 その中でも、エヌビディア決算については、足元のSOX指数(米フィラデルフィア半導体株指数)が戻り、高値を更新する場面を見せていたことや、昨年の下げ幅の「50%(半値)戻し」を達成していただけに注目度は高く、決算の内容次第では市場への影響が大きくなることも考えられます。

図7 フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の日足チャート(2023年2月17日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 さらに、半導体セクターについては、著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハサウェイが、保有している台湾半導体製造企業であるTSMC(TSM)株の大部分を売却したことが昨年12月末時点の報告で明らかになったとの報道がありました。

 同社によるTSMC株の保有が判明したのが昨年9月末時点の報告でしたので、わずか3カ月程度で整理したことになります。バフェット氏の投資スタンスは長期間であることは有名であるがゆえに、さまざまな臆測を呼びそうです。ちなみに、バークシャー・ハサウェイの株主総会は5月に予定されています。

 そのため、今週の株式市場のムードを左右するものとして、SOX指数やエヌビディア株などの半導体セクターの動向を注視する必要がありそうです。