排ガス規制強化が単位あたりの同需要増加要因

 筆者はそのヒントを、「自動車1台あたりの同需要」に見いだしました。以下は、主要PGMの同需要の合計を、その年に生産された自動車の台数で割った、自動車1台あたりの自動車排ガス浄化装置向け主要PGM(プラチナ、パラジウム、ロジウム)需要の推移です。

図:自動車1台あたりの自動車排ガス浄化装置向け主要PGM需要 単位:グラム/台

出所:Johnson MattheyおよびOICAのデータをもとに筆者作成

 ここで言う「自動車」とは、乗用車、小型商用車、トラック、バスなどの四輪自動車です。「自動車1台あたり」に直すと、同需要が顕著に増加していることがわかります。自動車の生産台数が減少しても、1台あたりの需要が増加したため、全体的な需要は急減しなかったと、筆者は考えています。

 統計上、2013年以降のプラチナの同データには「燃料電池車」向けの需要を含んでいるとされていますが、自動車の生産台数から考えれば、いまのところ、「燃料電池車」向けの需要がメインでこのグラフが上昇しているわけではないと、考えます。

「自動車1台あたりの同需要を」増やしたと考えられるのが、世界的な自動車排ガス規制強化です。以下のとおり、主要国の排ガス規制は年々、強化されています。強化される規制に対応すべく、1台あたりに使われるPGMの量を増やしている、というのが筆者の見立てです。

図:主要国の自動車排ガス規制(予定含む)

出所:Johnson Mattheyの資料をもとに筆者作成

 西側諸国が「脱炭素」を推進しているうちは、こうした規制強化の流れは止まらず、それに従い、排ガス浄化装置に使われるPGMの数量は少なくとも横ばいで推移(自動車の生産台数が増加すれば増加)する可能性があります。

 このため、今後も「フォルクスワーゲン問題」起因のプラチナの需要減少や価格下落は起きにくいと、筆者は考えています。