フォルクスワーゲン問題の意味を改めて考える

 2015年9月、米国の環境保護局の指摘により、ドイツの自動車大手「フォルクスワーゲン」社が、違法な装置を使い、排ガス浄化装置のテストを潜り抜けていたことが発覚しました。このことは「フォルクスワーゲン問題」として、今でも語り継がれています。

図:主要PGM、プラチナの需要内訳(2021年)

出所:Johnson Mattheyのデータをもとに筆者作成

 当時、市場関係者の多くは「これでプラチナの需要は激減して、価格が急落する」と考えました。上図のとおり、プラチナの需要の多くが、同問題で注目が集まった「ディーゼル車」の「排ガス浄化装置」に使われているためです。

 プラチナを含む主要なPGM(プラチナ・グループ・メタルズ、詳細はこちら)の合計を見ても(グラフ左)、自動車排ガス浄化装置向け需要の割合が大きいことがわかります(ディーゼル車だけでなくガソリン車にもPGMが使われている)。

 同問題の発覚は、「ディーゼル車の信用失墜」→「同車向けのプラチナ需要激減」→「プラチナの相場はもう上昇しない」というイメージを醸成しました。

 長期視点で(短期ではない)、プラチナと金(ゴールド)の価格が離れたのが、ちょうど同問題発覚から間もないタイミングだったことを考えれば、上記の「イメージ」がプラチナ相場を長期低迷に追いやったと言えるでしょう(短期視点では、金(ゴールド)がプラチナのけん引役となる傾向は生きているが)。

図:プラチナ、金の価格推移(ドル建てスポット 月間平均) 単位:ドル/トロイオンス

出所:世界銀行のデータをもとに筆者作成

 同問題発覚を機に発生した「イメージ」が、長期視点で、プラチナと金(ゴールド)が袂(たもと)を分かつきっかけになったわけですが、そのことによって、プラチナは、長期視点(短期ではなく)で、プラチナ独自の材料で動けるようになったと、考えられます。