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本レポートに掲載した銘柄:オン・セミコンダクター(ON、NASDAQ)
オン・セミコンダクター(ON、NASDAQ)
1.2022年12月期2Qは24.9%増収、営業利益2.1倍
オン・セミコンダクターはパワー半導体で世界第2位(1位はインフィニオン)、イメージセンサーで世界第6位(1位はソニーグループ)のロジック半導体メーカーです。
オン・セミコンダクターの2022年12月期2Q(2022年4-6月期、以下今2Q)は、売上高20.85億ドル(前年比24.9%増)、営業利益5.84億ドル(同2.1倍)となりました。不採算事業からの撤退を進めているため、のれんと無形固定資産に合わせて1.15億ドルの減損が発生しました。このため、前年比は大幅増益となりましたが、営業利益率は今1Q33.3%から今2Q28.0%へ低下しました。減損がなければ今1Qと同等の営業利益率で、より大きい営業増益率になっていたと思われます。
表1 オン・セミコンダクターの業績
2.自動車向け、産業向けパワー半導体とイメージセンサーが好調
今2Qの事業別売上高を見ると、パワー・ソリューションズ・グループ(主にパワー半導体)は10.57億ドル(同24.9%増)、インテリジェント・センシング・グループ(イメージセンサー、温度センサー、光センサーなど)が3.11億ドル(同44.3%増)と好調でした。一方、アドバンスド・ソリューションズ・グループは7.16億ドル(同18.0%増)と他の2事業に比べて低い伸びとなりました。これは、この事業に不採算のスマホ向け、パソコン向けが含まれていること、これらの不採算事業からの撤退を進めているためです。
また、分野別売上高を見ると、自動車向けが7.84億ドル(同41.0%増)と好調でした。EVが普及するにつれて、電力制御や省エネのためにパワー半導体の搭載数が増加しました。また、自動運転の普及に伴いイメージセンサーが増加しました。
産業向けも5.81億ドル(同34.3%増)と好調でした。産業向けでも省エネや脱炭素化の流れに沿ってパワー半導体が好調でした。また、監視や制御等に使うイメージセンサーも好調でした。
会社側は、パワー半導体の中でも将来性が大きい「炭化ケイ素(SiC、シリコン・カーバイド)」系パワー半導体へ大型投資を進めています。会社側では今後3年間で40億ドル以上のSiC長期供給契約を確保しています(長期供給契約の多くが自動車向け)。SiCウェハはパワー半導体としての特性が極めて良好ですが、その半面、通常のシリコンウェハに比べ硬くて脆く加工が難しいのが難点です。そのため、SiC系パワー半導体の大量生産能力を獲得することができれば、当社にとって大きな競争力になると思われます。
表2 オン・セミコンダクターの事業別売上高
表3 オン・セミコンダクターの分野別売上高
グラフ1 オン・セミコンダクターの事業別売上高
表4 パワー半導体売上高ランキング
表5 パワー半導体の市場予測
3.楽天証券の2022年12月期、2023年12月期業績予想を上方修正する。
会社側は今3Qガイダンスを、売上高21.20億ドル(前年比21.7%増)、営業利益7.07億ドル(同77.1%増)としています。引き続き業績好調が予想されます。
今2Qまでの実績と今3Qの会社側ガイダンスを参考に、楽天証券ではオン・セミコンダクターの2022年12月期、2023年12月期を上方修正します。2022年12月期は前回予想の売上高82億ドル(前年比21.7%増)、営業利益26億ドル(同2.0倍)を、売上高84億ドル(同24.6%増)、営業利益27億ドル(同2.1倍)へ、2023年12月期は前回の売上高97億ドル(同18.3%増)、営業利益32億ドル(同23.1%増)を、売上高105億ドル(同25.0%増)、営業利益36億ドル(同33.3%増)へ上方修正します。
前回予想は来期2023年12月期について、景気減速の影響を考慮し増収増益率が鈍化すると予想しましたが、今回予想では、足元のパワー半導体とイメージセンサー、自動車向けと産業向けの強さを考慮し、2023年12月期の業績鈍化は起こりにくいと予想しました。
4.今後6~12カ月間の目標株価を、前回の80ドルから95ドルに引き上げる
オン・セミコンダクターの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の80ドルから95ドルに引き上げます。楽天証券の2023年12月期予想EPS(1株当たり利益)6.29ドルに、成長性を考慮して想定PER(株価収益率)15~20倍を当てはめました。
世界の産業界の脱炭素化と省エネ、電気自動車(EV)と産業機器における脱炭素化、省エネ、自動運転、監視と制御は、株式市場で長く続くテーマであり、パワー半導体とイメージセンサーの大きな需要分野であると思われます。引き続き中長期で投資妙味を感じます。
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