年末まで商品市場は緩やかな価格上昇を演じる?

 年末まで、コモディティ市場にほどよい上昇圧力がかかり続けるための条件は、以下の四つです。特に、米国で最悪にいたらない利上げが続くこと、ウクライナ危機が鎮静化しないこと、が重要です。

・米国で最悪にいたらない利上げが続くこと。(今年のFOMCは9・11・12月の3回)
・欧米の中央銀行がインフレ退治に利上げが有効だとみなし続けること。
・底流するインフレ要因であるウクライナ危機が鎮静化しないこと。
・米中間選挙に向け、美点凝視の選挙戦が続くこと。

 シナリオ継続のための四つの条件が満たされた状態が続いた場合、特にウクライナ危機と結びつきが強い小麦や原油は、年末までに、6月上旬の水準まで戻ると考えています。

 原油は120ドル近辺(現在97ドル前後)、小麦は1,000セント近辺(現在800セント前後)が、シナリオ継続時の、年内の上値のメドと考えます。ウクライナ危機が続き、最悪にいたらない「まし」な利上げが続けば、(利上げ実施でも)株高・コモディティ高が続くと、考えます。

図:NY原油とシカゴ小麦先物の価格推移 2022年2月1日を100として指数化

出所:QUICKのデータより筆者作成

 ウクライナ危機が年内に鎮静化するかどうかについては、以前の「まるで世界大戦。戦場は「原油市場」」で述べたとおり、同危機が壮大なスケールの下で起きている可能性があることから、その可能性は低いと考えます。

 米中間選挙は、今年11月8日に行われます。4年ごとの大統領選挙の間の年に行われ、上院議員の3分の1と下院議員の全議席が改選。複数の州で州知事選も行われます。

 足元、ドナルド・トランプ前大統領が推薦する候補者が、予備選(立候補する人を選ぶ選挙)を優位に進めていると報じられていますが、一部の州知事選の予備選挙ではトランプ氏が推薦する候補者が大差で敗れるなど、読みにくい情勢が続いています。

 泥仕合(どろじあい。あげあしを取り合うひどい争い)にならない、政策を前向きに議論する、美点凝視の選挙戦が続くことが望まれます。それが、コモディティ市場にほどよい上昇圧力がかかり続ける条件の一つです。

 また、ECBの利上げが急激に進み、ユーロ高および対ユーロのドル安が進んだ場合、このドル安が意識され、「代替通貨」の側面から金(ゴールド)が買われる可能性もあります。(金(ゴールド)の変動要因は「やってはいけない!コモディティ投資の悪手(あくしゅ)」で述べています)

 今回は、年末までのコモディティ市場の全体的なイメージを書きました。シナリオを支える四つの条件が喪失したり、今回取り上げたもの以外の材料が目立ち始めたりした場合は、その限りではありませんが、目先の中期的な流れを考える際の参考になれば、幸いです。

[参考]コモディティ(商品)全般関連の投資商品

投資信託

SMTAMコモディティ・オープン
ダイワ/「RICI(R)コモディティ・ファンド
iシェアーズ コモディティ インデックス・ファンド
eMAXISプラス コモディティ インデックス
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Aコース(為替ヘッジあり)
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Bコース(為替ヘッジなし)

海外ETF/ETN

iPathピュア・ベータ・ブロード・コモディティETN(BCM)
インベスコDB コモディティ・インデックス・トラッキング・ファンド(DBC)
iPathブルームバーグ・コモディティ指数トータルリターンETN(DJP)
iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト(GSG)