世界中で超金融緩和が進行している。米国・欧州・英国・日本の全てが同時金融緩和に動いている。加えて中国・インド・ブラジルでも利下げが行われており、今年は金融緩和第2幕相場となっている。

この金融緩和によるバブル相場の保険となっているのは、「バーナンキ・プット=QE3」である。「相場が下がればバーナンキがなんとかしてくれる」という思惑が市場に下値硬直性をもたらしている。しかし、バーナンキFRB議長は2月29日に行われた半期に一度の議会証言で、QE3の可能性については示唆せず、QE3実施観測が後退した。

QE3の後ズレ観測で直近の相場ではドルが買い戻され、NYダウは上値の重い展開が続いている。昨今、NYダウの強い上昇局面ではドル安がセットになっており、NYダウが大きく上がらないのは、「QE3の後ズレ観測とドル高」の影響が大きい。

昨日はWSJ紙が「FRBが新たな債券買い入れプログラム(QE3)を検討、債券の買い入れと同時に短期証券を発行して資金を調達する不胎化を実施か?」と報じて、QE3期待が再浮上している。QEによるインフレ批判をかわす観測気球だ。NYダウはこれを好感して上げているが、相場の行方は中央銀行次第という単純な反応である。住宅証券(MBS)に特化したオペレーション・ツイストの噂も出ているが、住宅PKOであるQE3は今年中に行われるだろう。

ドルインデックス先物(日足)

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

NYダウ先物日足

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

このところのNYダウの上値の重さを嫌気して、豪ドル/円などNYダウと連動するクロス円も調整局面となっている。豪ドル/円やユーロ/円の日足は1カ月の市場参加者の平均コストを示唆する21日移動平均線を終値で維持しているので、弱気相場に転じたわけではない。

しかし、標準偏差ボラティリティやADXといったトレンド指標の形状をみると、すくなくとも日柄調整による値固め(横ばいでの調整)か、値幅(下押し調整=円高を試す)での調整に入った可能性がある。この見方が否定されるのは、相場が今年の最高値を上抜いた時である。

標準偏差ボラティリティとADXが下落する局面は、相場の調整を示唆する局面である。トレンド相場と違って、調整相場のフォーメーションは非常にややこしい。上がったり下がったり訳のわからない相場が多いので、筆者は相場見通しを聞かれても「わかりません」と答えている。

豪ドル/円(日足)

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

ユーロ/円(日足)

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

ドル/円相場の日足も今週の相場で21日ボリンジャーバンド+1σラインの内側に入ったため、本当に強いバブル相場は一旦終了した形となっている。ただし、ドル/円は13日移動平均線も終値では維持しており、円の通貨ペアの中では最強である26日標準偏差ボラティリティがピークアウトしそうになっている事が気になるが、21日移動平均線を維持している限り基本的に強気相場は終わらない。

ドル/円(日足)

上段:26日標準偏差ボラティリティ
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13-21日移動平均バンド(紫)


(出所:石原順)

ドル/円(日足)

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

ドル/円は昨年の高値と安値の61.8%戻しを達成した後、半値戻しの水準まで押しを入れている。下値には20カ月移動平均線・一目均衡表週足の<雲>・60週移動平均線など多くのサポートが控えており、80円処の下値は堅いと思われる。トレンド指標がピークアウトし調整相場に入っても、その調整は横ばいのレンジ調整となりそうだ。

ドル/円(日足) 相場の支持・抵抗線

2010年の高値・安値のリトレースメント(青)・フィボナッチファンライン(赤)・ギャンアングル(緑)


(出所:石原順)

ドル/円(週足)

上段:60週移動平均線(緑)・26週標準偏差ボラティリティ(青)
下段:14週RSI(赤)


(出所:石原順)

ドル/円 20カ月移動平均線(左)と週足均衡表の<雲>(右)


(出所:石原順)

ドル/円は投機筋の円買いポジションが買い戻され、買い戻しの動きは一巡している。ここからさらに上値を狙うには、今週末の雇用統計、あるいは来週13日の日銀金融政策決定会合(追加緩和期待?)やFOMCでのなんらかの材料がほしいところだ。投機筋がポジションを大きく傾けてくるのは、雇用統計と日米の金融決定をみた後になるだろう。

シカゴIMMの円のポジション ショートカバーが一巡?


(出所:石原順)

とりあえず、今週の雇用統計と来週の13日までは短期売買で様子をみるのが無難と思われる。現在は日中相場のボラティリティ(変動率)も高いので、1時間足などの短いタームフレームで売買しても、それなりのトレンドは発生している。

ドル/円(1時間足)

上段:26時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13時間移動平均線(赤)・21時間移動平均線(青)・21時間ボリンジャーバンド1σ(茶)9時間RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)

本日はECBの政策会合がある。2回のオペで100兆円もばらまいたので、金利はしばらく据え置き見通しとなっている。欧州が3回目のバラマキに踏み切るのは、欧州の資金繰りの危機が起きたときに限られるだろう。

ECBの資産 2回の3年物無制限オペによって、バランスシートが過去最大の3兆ユーロに達している。今のバブル相場はドラギマジックに依るところが大きい


(出所:石原順)

ユーロ/ドル(日足) 次のトレンド待ち

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:13日移動平均線(赤)・21日移動平均線(青)・21日ボリンジャーバンド1σ(茶)
9日RSI(鈍感バージョン)40-60 桃色=買い相場・水色=売り相場


(出所:石原順)