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政治的圧力で円安政策に一歩踏み出す
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

政治的圧力で円安政策に一歩踏み出す

2012/2/16
数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍する石原順氏による外国為替市場レポート「外為市場アウトルック」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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2月14日、日本銀行は「物価上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力な金融緩和を推進していく」という物価目標(事実上のインフレターゲット政策)を示した。また、国債など金融資産の購入原資となる基金の規模を、従来の55兆円から65兆円に10兆円引き上げるという追加金融緩和を行った。

日銀が今回追加緩和とインフレターゲット政策に踏み切ったのは、「日銀法改正」という政治的圧力を回避するためだ。リーマンショック後の日銀の対応はあまりに少なく遅かったので、「無策の円高」が続いてきた。それは下の「主要中央銀行のポートフォリオの推移」を見れば明らかだ。日本全体が円高によってシャッター商店街化していくなかで、日銀も「政治家のうるさい声」を抑えられなくなったということである。

1%という信じられないほど低いインフレ目標や10兆円という小規模緩和は、日銀のアリバイ作り(みせかけの量的緩和)に過ぎないので、すぐに円高に戻るという声も多い。実際、インフレ目標を3~4%、緩和の規模は50兆円くらいの政策をやらないと日本のデフレ脱却は難しいだろう。

とはいえ、日銀もあれだけ拒んでいたインフレ目標(あいまいだが…)を決めたことは、デフレ脱却に向けた一歩と評価してよいだろう。今後、日本の金融政策は政治圧力主導となるだろう。政府紙幣発行の話まで出てきているので、今後、「日銀券ルール」(日銀が長期国債保有額を日銀券発行額の限度内に収める)も、なし崩し的に撤廃される可能性がある。

主要中央銀行のポートフォリオの推移(1999年=100)

日銀のバランスシート拡大はあまりに少なく遅い=通貨安競争に敗北


(出所:フィナンシャルタイムズ)

日銀の量的緩和とドル/円相場(日足)

市場からは「小出しのアリバイ作り緩和」と言われているが…


(出所:石原順)

乱暴なことを言えば、日本経済の諸問題は円を印刷することで解決に向う問題が多い。デフレ・通貨高(円高)・国の借金など、主要な経済問題解決の答えは「円を大増刷する(円の価値を下げる)」ことであろう。

日本がデフレを止めるには、2000年にバーナンキFRB議長が述べた「日本への提言」を実行していくしかない。それは、以下の4つだ。

  1. 長期国債の買い入れ(金利を下げることで民間の借り入れコストを下げる)
  2. 短期の金利をゼロ近傍にとどめる期間を延長すると公言し、長期金利をさらに下げる
  3. 日本銀行が穏やかなインフレを追求していると公言すること、即ち「数年にわたりインフレ率を 3-4%の範囲におさめる目標を設定すること」(借り入れの促進・貯蓄から投資へ)
  4. 「円の実質的な下落を達成する試み」(円の価値を下げる)

外人は単純なロジックを好む(マネーは単純なロジックでしか動かない)ので、今回の日銀のインフレ目標決定には素直に円売りで反応した。ゴールドマンサックス投資顧問のオニール会長は、「日銀からの素晴らしい重要な動きだ。ドルは対円で今年中に100円に上昇する可能性がある」との見方を示している。

筆者は100円とは言わないが、1月26日のレポート「相場の揺り戻し(円安)は起こるか? 円高の修正見通しとその根拠」で述べた、相場の揺り戻し(円買われすぎの調整)が起こるのではないかと思っている。いずれにせよ、しばらくドル/円の下値は堅くなり、80円へのトライを模索しよう。

ドル/円(月足) 2012年相場は過去2年間の円独歩高相場が修正される可能性が高い

80円レベルへの平均回帰運動は始まっている?


(出所:石原順)

ドル/円(週足) 2007年からのトレンドライン上抜けで<雲>の下限が視野に…


(出所:石原順)

ドル/円(日足) 200日移動平均線(青)とギャンのファンライン


(出所:石原順)

個別通貨の動きを見てみよう。ドル/円は久しぶりに買いトレンドが発生している。ユーロ/ドルは買い戻し主導の上昇がピークアウトし、現在調整相場に入っている。豪ドル/円は堅調であるが、豪ドル/ドル相場の買いトレンドは消滅し、現在調整中である。

過剰流動性相場は理屈抜き相場である。値頃感を捨てて、トレンド指標(ADX・標準偏差)と13-21移動平均バンドの位置を注視しながら、テクニカル主導でアプローチするのがよいだろう。トレンド相場の観点から言えば、今年の相場は決して悪くない。

ドル/円(日足) 買いトレンド継続中

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(赤)
中段:13日移動平均線・21日移動平均線・一目均衡表<雲>
下段:9日RSI40-60


(出所:石原順)

ユーロ/ドル(日足) 調整相場

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(赤)
中段:13日移動平均線・21日移動平均線・一目均衡表<雲>
下段:9日RSI40-60


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足) 買いトレンド継続中も危うい展開

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(赤)
中段:13日移動平均線・21日移動平均線・一目均衡表<雲>
下段:9日RSI40-60


(出所:石原順)

豪ドル/ドル(日足) 調整相場

上段:26日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(赤)
中段:13日移動平均線・21日移動平均線・一目均衡表<雲>
下段:9日RSI40-60


(出所:石原順)

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