投資家の恐怖のバロメーターとなっているVIX指数(俗称:恐怖指数)は下がりっぱなしだ。この背景にはECBによる50兆円のバラマキ(2011年12月21日)と、FRBの「2014年末まで異常な低金利政策を続ける」(2012年1月25日FOMC)のという宣言の2つが大きく影響している。

VIX恐怖指数(日足)20以下の安全地帯へ 欧州危機なんてお呼びじゃない?


(出所:石原順)

筆者はこれまで「株価や為替の位置は中央銀行の政策」で決まると申し上げてきたが、市場が期待する「米・英・欧の同時量的緩和の環境」が整ってきた。ECBはこの2月29日に2度目の長期(3年)資金のバラマキを行う。前回の12月21日に比べてバラマキ額の規模が話題となっているが、いずれにせよジャブジャブの量的緩和を行うことに変わりはない。欧州危機は構造的な問題なので簡単には片付かないが、欧州危機の波乱でマーケットが急落しても、その場合にはバーナンキ・プット(QE3)が行使される。

そんなわけで、昨今のマーケット関係者は強気に転換した人が多く、「これからバブル相場が到来する」「バブル相場はまだ始まったばかり、株やコモディティはこれから上がる」などという勇ましい声が日々聞こえてくる。

財政出動ができない現在、世界経済は中央銀行の手に委ねられている。不景気になると中央銀行がカネをばらまくという社会主義的な経済運営(モルヒネ経済)に対する批判も多い。しかし、歴史を振り返ると、「世界的な大恐慌となって、戦争に向うよりはましだ」ということになる。

ECBのポートフォリオ(資産サイド)

ECBの裏口QE1で株式市場がバブル相場に・月末の3年資金供給オペ(LTRO)で株バブルはさらに加速するのか? 欧州には株高・ユーロ安が必要!


(出所:石原順)

ECBの政策金利とユーロ/ドルの推移

月末に3年資金供給オペが実施されるので、本日のECB理事会は政策金利据え置き見通しとなっているが、3月の利下げを示唆か?


(出所:石原順)

ECBによる欧州版QE1(裏口量的緩和)とバーナンキ・プット(QE3)という保険で、株式市場は「イケイケドンドン相場」となっている。現在、バブル相場の特徴である、悪材料にはほとんど反応しないという現象が起こっている。株が上昇基調となれば、為替市場ではクロス円相場の出番である。「豪ドル/円相場はNYダウの動きと同じだ」であるが、米株高を反映して豪ドル/円相場が動意付いてきた。

ナスダック(左)とNYダウ(右)の日足 上げの電車道相場


(出所:石原順)

豪ドル/円相場は今週に入り、2011年からの上値抵抗線を明確に上抜いている。豪ドル/ドル相場は先月に上値抵抗線を上抜けているが、どちらも上昇基調が鮮明となっている。上げ下げを繰り返しながらも、2011年高値までの全値戻し相場が展望できるチャートの形状となっている。

豪ドル/ドル(日足) 長期抵抗線ブレイクで2011年高値を伺う?


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足) やっと、抜けてくれました…


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足) 買いトレンド継続中

直近の相場では21日ボリンジャーバンド1σと13日移動平均線が押目買いポイントとなっている。


(出所:石原順)

ドル/円相場も週足の長期抵抗線を再度上抜けてきた。今週、このトレンドラインは77円05銭付近に位置しているが、週足の終値で相場がこのトレンドラインの上に位置していれば、来週以降、もう一段のドル/円上昇も期待できよう。

ドル/円(週足)長期上値抵抗線(赤)と一目均衡表の雲


(出所:石原順)

この先、ドル/円が本格的に上昇するには米金利が上昇する必要があるが、米30年国債のチャートは金利下げ止まりの形状となっている。相場がさらにバブルしてきて、逃避の米国債買い(安全資産買い)ポジションが減少に向うようだと、米金利のリバウンドが起こるだろう。米国債トレーダーは、「リスク選好で米国債市場から他市場にカネが流れつつある」と語っている。来年の2013年に利上げを予測するトレーダーも出てきている。QE3の後ズレ観測と共に、ドル/円の上昇を後押しする材料となるだろう。

米10年国債金利(左)と30年債国債金利(右)の日足

30年持って3%じゃ、株を買う? 米株高で、「今年の利上げはないが、2013年には利上げする」との声も増えてきた。


(出所:石原順)