消費国と産油国の分断が進む

「脱炭素」起因の「分断」は、国連決議の結果にも表れています。ロシアの人権理事会の資格を停止することを求める決議(4月7日)の際、産油国や産ガス国、つまり化石燃料の生産国らが多数、ロシアを否定しない姿勢を示しました。

 OPEC(石油輸出国機構)プラスとGECF(ガス輸出国フォーラム。オブザーバー含)では、賛成3、反対7、棄権17、無投票3となり、30カ国のうち9割が賛成しませんでした。「脱炭素への反発を体現・代弁するロシアを否定しない動き」にも見えます。

 消費国と産油国との「分断」は、原油市場に大きな影響を及ぼします。消費国が「化石燃料不要論」を唱え、産油国との信頼を棄損すればするほど、産油国側の消費国への配慮が低下し、その結果、市場価格は産油国寄りのものになる、つまり、原油価格が高止まりする可能性が高まります。

 経済的な原則で言えば、「化石燃料不要論」は需要減少要因であり、原油価格の下落要因となるわけですが、同論を機に「産油国の意向」が強く市場に反映するようになった場合は、価格は上昇し得ます。

 産油国に「原油はもう不要なのですね? それであれば、価格がいくら高くなっても大丈夫ですよね?」と問われた時、消費国は「原油はもういらない。それでも安くしてくれ!」とはなかなか言えないでしょう。「信頼の棄損」により、価格高騰が発生する可能性がある点にも配慮が必要です。