西側も上昇要因を提供している

 侵攻直後、西側は制裁を科せば、ロシアはすぐに音を上げる(ロシアがすぐに降伏して戦争が終わる)と踏んでいた節がありましたが、現在、ロシアはその制裁すら逆手に取って、逆に優位な立ち位置を享受しているように見えます。

 西側が制裁の「跳ね返り」によるインフレで経済的なダメージを負っているのを傍観しながら、自らは原油高による恩恵を享受しています。このような事態に陥っているのは、「金(ゴールド)に「100年越し」の長期上昇要因発生!?」で述べたように、西側自身に「パラドックス(自己矛盾)」があるためです。

 足元、西側が経済制裁を強化すればするほど、世界全体のエネルギー供給量が減少する懸念が強まり、エネルギー価格が上昇し、インフレが加速しています。

 そして、そのインフレを受け、FRB(米連邦準備制度理事会)は金融引き締めを強化し、金融市場では不安が拡大しています。制裁を科せば科すほど、西側は自分たちを困難な状況に追い込んでいるわけです。(パラドックスに陥っている)

 ロシアは、開戦前から、西側が科す制裁や講じる政策が、エネルギー価格を上昇させること(西側がパラドックスに陥ること)を認識していた可能性があります。開戦前日(2月23日)、ドミトリー・メドベージェフ露安全保障会議副議長は「(欧州ガス価格が高騰する)新しい世界にようこそ」とツイートしていました。

 また、およそ100年前のロシア革命の指導者レーニンの言葉「資本主義を破壊する最善の方法は通貨を堕落させる(インフレを起こす)こと」が、現実になりつつあるわけです。

図:ロシアのウクライナ侵攻の動機と西側への影響

出所:筆者作成