「パラドックス」とは?

「私は嘘(うそ)つき」

 有名なパラドックスの例に、「私は嘘(うそ)つき」があります。仮に、この発言が真(私=正直者)だとすると、「私は嘘つき」は真(この人の発言内容=嘘)です。そうすると、仮定(私=正直者)と結論(私=嘘つき)は矛盾します。

 逆に、この発言が偽(私=嘘つき)だとすると、「私は嘘つき」は偽であるため、「私は正直者」となります。そうすると、仮定(私=嘘つき)と結論(私=正直者)は矛盾します。

 パラドックスとは、一見、正しく見える仮定から、矛盾に満ちた納得しがたい結論が導かれてしまう問題のことです。「自己矛盾」と言い換えることもできます。

・西側のパラドックス
「西側諸国」(欧州や米国などの主要国とその同盟国。以下、西側)には、巨大なパラドックスが複数存在します。西側は「自由」「平等」「競争」「団結」が社会の幸福に寄与すると考える資本主義社会です。

 西側は「自由」な「競争」を旨とし、お金の循環を市場の自己調節機能に任せましたが、その結果、巨大な「不平等」と「格差」が生まれました。また、「団結」を目指してベルリンの壁を壊したり、EUを作ったりしましたが、心情的な結びつきよりも経済的な結びつきが優先されるようになり、「分断」が発生(英国離脱)しました。

 一見、正しく見える考え方から、納得しがたい結論が導かれてしまっています。これはパラドックス以外の何物でもありません。(その他の例を下図に記載)

図:西側が抱えるパラドックスの例

出所:筆者作成