「ウクライナ危機」は目下、材料の王様

「並列」で語ってはいけない2つの材料

 しばしば、足元の景気に不透明感がある理由は、「ウクライナ危機」「米国の金融引締め」の2つだ、という解説を目にします。2つの理由は並列の関係にあると言っているわけですが、筆者はこの点ついて異なる意見を持っています。

 並列ではなく、直列。順番は「ウクライナ危機」が先(主)で「米国の金融引締め」が後(従)です。2つは一部、因果関係にあり、ウクライナ危機の激化が米国の金融引締めを加速させている側面があると、考えます。

図:ウクライナ危機と米国の金融引締めの関係

出所:筆者作成

「根底にある材料」=王様

 ウクライナ危機が激化すれば、ロシアがエネルギー、食糧、金属などを、同国とベラルーシが化学肥料などを出し渋り、インフレがさらに加速。それに呼応して米国が金融引締め策を強化する可能性があります。

 ウクライナ危機が終わらなければ、米国の金融引締めは終わらない、ウクライナ危機の継続は、多重不安の継続を意味する、ということです。

「根底にある材料」という意味で、目下、ウクライナ危機は現在の「材料の王様」と言えるでしょう。では、その材料はいつまで王様の座に居座り続けるのでしょうか。

 先述の通り、ロシアが今回のウクライナ侵攻を、「資本主義への攻撃」と位置付けているのであれば、終戦までの道のりは長く困難なものになる、つまり、ウクライナ危機が長期的に王様の座に居座る可能性があると言えます。