ゼロコロナ政策の行方と減速傾向の中国経済

 今後の両市場の見通しについて、ポイントを整理しておきます。グローバルでは、米国市場における過剰流動性の収縮がどこまで続くのかといった点が重要です。利上げによる影響はもちろんですが、6月以降実施されることが決まったQTによる影響の方がより気になります。

 中国に関しては、2つあります。一つ目は、ゼロコロナ政策は一体いつまで続くのかといった点、二つ目は、足元で減速傾向を強める中国経済ですが、国務院はタイムリーに十分な景気刺激策を打ち出せるのかといった点です。本土市場に上昇トレンドが出てくれば、香港市場にも資金が流入するとみています。

 まず、ゼロコロナ政策に関してですが、中央政治局常務委員会は5月5日、「ゼロコロナ対策を徹底して行う」といった方針を明らかにしました。会議では「我々の防御コントロールの方針は共産党の性質や教義による決定である」と指摘しています。ゼロコロナ政策は政治的にとても重要だと強調しています。

 新型コロナの危険性について「グローバルな感染状況は依然として高い水準を保っており、ウイルスは不断に変異しており、感染状況が最終的にどうなるのか非常に大きな不確実性がある」と警戒しています。だから、「一息ついて、足を休める状況ではない」のです。

 また、中国独自の問題として、「我が国は人口大国であり、老齢人口が多く、地域の発展は不均衡であり、医療資源の総量が不足している」と分析。だから「防御コントロールの勢いを弱めれば大規模なグループ感染が起こり、大量の重篤患者、死者を出してしまい、経済・社会の発展や人民の生命の安全、身体の健康にひどい悪影響を与えるだろう」としています。

 結論は「1ミリも動揺することなく『動態的に完全なゼロ』といった総体方針を堅持する」ということです。

 中央政治局常務委員会でこう結論付けられては、「ゼロコロナ政策」は揺るぎません。夏休み中に行われるだろう北戴河会議において、多少の修正はあるかもしれませんが、9月10~25日の日程で杭州市にて開かれる予定であったアジア大会が来年に延期されることを考えると、秋に行われるだろう全国共産党大会までは「ゼロコロナ政策」は維持されると見た方がよさそうです。

 ただし、肝心の感染状況ですが、労働節休暇中、全国的に厳しい移動制限がとられたことや、中国全土が気温の高い時期に入ったことなどから、足元の感染者数は大幅に減少しています。

 5月14日時点における発病ベースの本土新規感染者数は226人、症状の出ていない感染者数は1,492人でした。ピークは、ほぼ1カ月前に当たる4月15日で、前者は3,867人、後者は2万813人でした。随分と落ち着いてきています。

 感染者がいなければ、いくら政治的に厳しいゼロコロナ政策が堅持されたとしても、経済に影響が出るような都市封鎖、移動制限は必要ありません。国務院は思い切った景気対策を打ち出すことができるはずです。

 その景気対策についてですが、4月29日に開かれた中央政治局会議において、当面の経済運営方針が検討され、5.5%前後の成長を目指すといった目標が堅持されました。

 つまり、共産党はゼロコロナ政策を維持した上で5.5%前後の成長を達成しなければならないといったいかにも厳しくみえるミッションを自ら科したのです。

 もし、両方達成できるとすれば、

  1. 新型コロナを遅くとも上半期中には抑え込み、人流制限をしなくとも良い状態をつくり出すこと
  2. その上で、上期に伸び悩んだ経済を急回復させるための景気刺激策を打ち出すこと

が必要です。そして、このミッションが達成できてこそ、習近平体制の3期目入りが政治的に盤石となるのです。