9月8日、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は、ユーロ圏経済に対する下方向リスクが強まったとの認識を示し、今後数カ月は政策金利を据え置くことを示唆した。売り材料には事欠かないユーロだが、3月のトリシェ・ショックから金利差要因でユーロはなかなか下がらなかった。しかし、トリシェ総裁が景気とインフレ見通しを下方修正してきたので、金利差相場でのユーロの買い要因はもうない。
ユーロ圏の政策金利
2008年のリーマン危機1カ月前の利上げと同様に、2011年の利上げも挫折感が漂う

(出所:石原順)
ユーロ圏の債務問題については昨年のギリシャ危機から延々続いており、危機が起こると対症療法で対策を出しながら先送りしていくというパターンには何の変化もない。いくら悪材料が出てもなかなか下がらなかったユーロ/ドルが数カ月間の保合(もちあい)を下離れた理由は、ユーロ圏の利上げ期待がなくなったことが一番大きい。なぜなら、昨今の為替市場はずっと金利差相場が続いているからだ。
金利の支えを失ったユーロが下落(レンジを下げる)するのは自明の理である。トリシェ・ショックによってトレンドを失って長いレンジ相場が続いていたユーロ/ドルは、先週レンジブレイクが起こり久しぶりの大相場となっている。ファンド勢もユーロ/ドルが明確に200日移動平均線を下抜けたことで、中長期のユーロの予測値を引き下げるところが増えてきている。
ユーロ/ドル(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・2σ(赤)・3σ(青)
(筆者も久々にECB理事会の日からユーロ/ドル市場に参入している。日々の相場動向は『石原順の日々の泡』を参照されたい)

(出所:石原順)
ユーロ/ドル(日足) 200日移動平均線(赤)とフィボナッチのリトレースメント

(出所:石原順)
ユーロ/ドルは先週金曜日からの急激な下落の反動で一旦大きく戻したが、筆者は種玉(コアとなる売りポジション)を残して、利食いと戻り売りを繰り返しながら柔軟な対応をしている。相場が暴走した場合、ポジションの一部を利食ったり、トレール注文(利食いの逆指し値)を置いておくと、相場が逆に動いた時の対応が楽である。そのような玉(ポジション)の入れ替えを筆者はよく行うが、いずれにせよトレンドが終わる(相場が1σのバンドの内側に入る)までは売りを継続することに変わりはない。
さて、最近世界経済の見通しをよく聞かれるのだが、世界経済が危機を脱するのか、あるいは2番底、3番底を付けに行くのか、様々な見方がある。筆者は金融株の動きだけをみている。「なぜ不景気になるのか?」を突き詰めていくと、それは「銀行がカネを貸さなくなる」からである。銀行の自己資本が毀損すれば、貸し渋りや貸し剥がしで不景気になるのは90年代以降の日本が経験してきたことである。
今後、景気が本格的に回復する局面がくるとすれば、それは金融株が上昇基調転じる必要があるだろう。残念ながら金融株の下落基調はまだ継続している。今回のユーロ急落もギリシャに多くのカネを貸している仏銀の株価急落に端を発しているが、インターバンク市場では欧州の銀行の格下げを受けてドルの調達コストが上昇しており、予断を許さない状況が続いている。こういった情報はすべて株に織り込まれる。多くの情報をウォッチしなくても、金融株の動きを見ていれば景気の実情は読めるといえるだろう。
BNPパリバ(左)とソシエテジェネラル(右)の日足
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)

(出所:石原順)
クレディアグリコール(左)とウニクレディット(右)の日足
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)

(出所:石原順)
仏CAC40株価指数(左)と独DAX株価指数(右)の日足
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)

(出所:石原順)
先週のレポートに書いたように、株が軟調になると、「不景気のドル高」でドルは上昇する。20~21日のFOMCまでは、基本的に株の動きをみながらの相場だろう。相場が下落しやすい秋相場だが、仮にもう一段の世界的な株安があれば、ドルが上がる確率は大きい。しかし、どの通貨にも当てはまるわけでなく、ドル上昇の主役はユーロ/ドルとなるだろう。
投機筋を熱狂させたゴールド相場も現在は調整相場で上値が重くなっている。スイスフランは当局のさじ加減ひとつなので、様子見をしているファンドが多い。ドル/円は相場が止まってしまったかのような静かな展開だ。ファンドの間では「ドル/円75円、ユーロ/円の100円あたりでは介入する可能性がある」との見方が出ているが、この動きではトレーディング対象にならないだろう。いずれにせよ、今一番ホットな市場はユーロである。
ゴールド先物(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
下段21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)

(出所:石原順)
ドル/スイス(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)・14日ADX(赤)
下段21日ボリンジャーバンド1σ(緑)

(出所:石原順)
ドル/円(日足)
上段:26日標準偏差ボラティリティ
中段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)
下段:20日ATR(赤)

(出所:石原順)











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