6月末にQE2は終了した。マーケットに大きな波乱はなく、市場参加者の不安心理を反映すると言われるVIX恐怖指数も20以下で楽観的に推移している。追加緩和は今のところないので、上を買い上がるような相場にはならない。しかし、マネーがジャブジャブの状況に変わりはないので、押し目には買いが入ってくる。その結果、相場は一定のレンジでの横這い推移となりやすい。

VIX恐怖指数 マーケットは狭い範囲の変動を予想


(出所:石原順)

FRBの資産 米国は社会主義的なバブル・リレーを続けて時間を稼ぐしかない?


(出所:フィラデルフィア連銀)

QE2が終わって米景気が回復していれば問題ないのだが、雇用は回復せず、住宅は2番底、株価は横這いとなっており、米国の景気見通しは悲観的な論調が多い。

現在の米国の状況は、中産階級の貧困化(screwing)とインフレ(inflation)を合わせたスクリューフレション(Screwflation)という言葉がぴったりだ。

  • 中間層の実質賃金は過去30年間横這い
  • 株価は過去10年間ボックス圏
  • 住宅価格は過去4年間下落基調
  • 失業率は高止まり

というのが、米国の現状である。

先週のレポートにも書いたが、これでインフレになったら打つ手がないので、2012年米大統領選を控えるオバマ政権はなりふりかまわず、コモディティ・マーケットに対する介入を行っている。5月の商品市場への介入(証拠金引き上げ)、6月のIEA(国際エネルギー機関)の石油備蓄放出で投機筋は商品市場から一旦撤退を余儀なくされている。

6月には株価下落というQE3催促相場をやったが、過剰流動性相場で予想以上に下値が堅く、今度は一転買いにまわっているのが現在の相場だ。いずれにせよ、「押し目は買うが、買い上がる気はない」ので、どの市場もレンジ相場の範疇を逸脱するような動きにはなりにくい。

豪ドル/円(左)とドル/円(右)の日足


(出所:石原順)

ゴールド先物(左)とシルバー先物(右の)日足


(出所:石原順)

コーン先物(左)と原油先物(右)の日足


(出所:石原順)

筆者にとってはトレンドが発生するのが理想の相場だが、このような状況では、この先も大なり小なり、レンジ相場を想定した対処をしなければならない。

6月のレポートで紹介した「豪ドル/円のトレードアイデア」に続き、今回のレポートでは「ドル/円相場のトレードアイデア」を紹介しよう。

ドル/円の長期的な逆張りポイントは20カ月移動平均の±2σ近辺である。だたし、トレンド相場の場合、バンドに沿いながら上げたり下げたりするので、オシレーターの反転を確認しないと大きな損を被る可能性が大きい。反転の動きは20カ月移動平均線が支持や抵抗となりやすいのが特徴である。

ドル/円(月足)

中段:ストキャスティクス5・3・3
下段:20カ月ボリンジャーバンド2σ


(出所:石原順)

ドル/円の中期的な逆張りポイントは60週移動平均の±2σ近辺である。同時に14週のRSIが30を割れたところが理想的なポイントだ。反転の動きは60週移動平均線が支持や抵抗となりやすいのが特徴である。

ドル/円(週足)

上段:60週移動平均線
下段:14週RSI


(出所:石原順)

ドル/円の中期観測に関して付け加えると、過去20年の相場では一目均衡表(週足)の雲が強力な抵抗帯となっている。ドルが上がっても、ここは簡単に抜けないと思われる。

ドル/円(週足)

一目均衡表の<雲> 1990~2011年


(出所:石原順)

最後にドル/円の短期的な逆張りポイント、即ち日足ベースの逆張りポイントは21日移動平均の±2σ近辺である。20日ATRが低下中は-2σ近辺での買いがワークしやすい。

ドル/円(日足)

上段:21日ボリンジャーバンド2σ
下段:20日ATR


(出所:石原順)

よく、レンジを想定した逆張りでは、RSIやMACDなどのオシレーターが使われる。筆者の経験ではそれらを単独で使ってうまくいくときもあるが、あまりいい思い出がない。逆張り、即ち相場の転換点を探る売買手法では、ボリンジャーバンド+αの組み合わせがよいと思われる。

ドル/円(日足)RSI(14日)70-30超で逆張り

上段:21日ボリンジャーバンド2σ
下段:20日ATR


(出所:石原順)

ドル/円(日足)MACDのシグナル


(出所:石原順)

ドルインデックス先物(日足)と米国の量的緩和政策


(出所:石原順)