今週は来客が多く、超多忙の1週間となっている。ファンド関係者や運用者と意見交換をしているのであるが、「6月以降の相場観」は結構割れていて、QE2終了に向かっていくマーケット環境が不透明さを増していることを物語っている。

現在、5月決算事情でファンド勢は休んでいるところも多く、その影響でマーケットは閑散状況となっている。為替のマーケットでは消去法でスイスフランが買われているのを除けば、他の通貨ペアは「日替わりメニュー」で上げたり下げたりを繰り返しているに過ぎない。

スイスフラン買いの理由は例によって金利上昇(利上げ)観測であるが、日足ベースでトレンドが出ているわけはなく、投機筋はもっぱらユーロ/スイスの1時間足などの短期売買を繰り返しているに過ぎない。

ドル/スイス(日足)

上段:14 日ADX(赤)・26 日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21 日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ユーロ/スイス(1時間足) ユーロ/スイス最安値更新相場に投機筋が短期参戦

上段:14時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21時間ボリンジャーバンド1σ(紫)


(出所:石原順)

日替わりメニューのレンジ相場になっているのは、ファンド勢が動かない(中期的なポジションを持たない)からだ。したがって、現在の相場は上げても下げても持続性がない動きが繰り返される。

相場が動かないということは、レンジ相場で逆張りをする投資家にとっては好都合である。
下のチャートを見て頂ければわかるように、現在の豪ドル/円の日足相場にはまったくトレンド(方向感)がないので、逆張りはワーク(機能)する。

ただし、相場のボラティリティ(変動率)のレベルが極端に低いので、現在の豪ドル/円相場の逆張りポイントは21日ボリンジャーバンド-1σと21日移動平均線のレンジに限定される。相場の方向は概ね前日のNYダウ連動である。

豪ドル/円(日足) 21日移動平均線とボリンジャーバンド-1σの往来

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・21日移動平均線(茶)


(出所:石原順)

豪ドル/円(上)とNYダウ(下)の日足


(出所:石原順)

通貨インデックスを観察すると、現在の相場はドル主導ではなくユーロ主導で動いていることが明確である。ユーロに関しては現在、10人中9人が弱気、即ち、ユーロ安の方向をみているが、その割には下値が堅く、悪材料に対する耐久力も強い。これには首をかしげている運用者も多いが、原油の売りトレンドが消滅したことがユーロの下値を堅くしていると言ってよいだろう。

背景にあるのは中国マネーである。

「中国政府などアジア勢がEFSFによる来月の入札でポルトガル救済債券を大量に購入する予定」と英FT紙が観測記事を書いたことで、悪材料山積のユーロは現在ショートカバー(売り方の買い戻し)相場となっている有様だ。現在のユーロ/ドル相場はボラティリティレベルが非常に高いので、たとえ下げ相場であっても上下の振れが大きい。売るにしても買うにしても、大きなポジションやレバレッジを上げないで余裕を持って望まないと、「売ってやられ、買ってやられ」になりやすい。

ユーロ/ドル(日足) ボラティリティレベルが高く相場の振れが大きい

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

今週、「ゴールドマン・サックスが再びコモディティ買いを顧客に推奨した」と報道されたことから、コモディティ市場もリバウンドに入っていると言われているが、急落前に売り抜けたと言われる欧州系銀行はさておき、米系銀行やファンド、ETFの投資家などは活発に動いているわけではない。

ここでコモディティを買っているのはチャイナ・マネーである。チャイナ・マネーは長期戦略がロング・オンリーなので押し目では買いで必ず登場しており、その戦略はこれまでのところ成功している。

原油先物(日足)売りトレンドは消滅

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)

ついこの間まで「景気回復や利上げ」を騒いでいたマーケットだが、ここにきて「世界の景気減速懸念」や「不景気のドル高」といった悲観的なマーケットテーマが浮上している。米国・欧州・日本の何処も問題だらけ(悪さ比べ)で、今ひとつ焦点ボケが続いている現在の相場だが、筆者は来週の動きに注目している。6月相場になればファンド勢が市場に戻ってくるからだ。それまでは、「上を買い上がらない・下を売り叩かない」といった動きが続きそうである。

OECDが発表した各国の生活の豊かさを示す新たな指標「より良い暮らし指標」(国民の幸福度を国際比較)では、トップはオーストラリアで、2位カナダ、3位スウェーデンの順となっている(日本はOECD加盟34か国中19位)。「より良い暮らし指標」はGDPなどより、通貨の選択にも有効な指標ではないだろうか?

幸福度19位の割には高すぎる円の修正相場があってもおかしくないが、ドル/円チャート形状は悪くない。この先、82円50銭を上抜けてくれば、久々の円安トレンドが発生する可能性は十分ある。ここから6月1週に向けての動きに注目したい。

ドル/円(日足) 82円50銭を抜けてくれば、面白い相場に…

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)