注目のバーナンキFRB議長会見は「QE2を止める」ということを、市場に織り込ませるのが目的だったようだ。そして、「QE2の終了はマーケットに大きな影響与えない」「金融緩和は当面続ける」という事を市場に向けてアピールしたかったのだ。
そのために、FRBはこれまで出口を急ぐタカ派の連銀メンバーを使って、「QE2の終了」を市場に織り込ませる戦略をとってきた。会見では、「QE2を終了しても保有債券の償還資金を国債に再投資し、FRBの資産はすくに売却しない」など、今後も緩和姿勢を続けることを強調している。
米国の量的緩和政策とNYダウの推移
米国のケース・シラー住宅価格指数は2番底を模索中
議長は就任当初は表向き「金融政策の舵取りは物価の安定を目標にすべきであり、資産価格(株・不動産・為替など)の動向に左右されるべきではない」という姿勢を示していた。しかし、最近では「株が上がると消費者の資産が増えて消費が増える」という資産効果を重視する考えを表明している。景気の2番底回避のためにはジャブジャブの緩和姿勢を継続して株高路線をとり、その結果としてのドル安は、インフレ指標の上昇やトリプル安(債券安・株安・通貨安)にならない限りは容認する方向だ。
ドル年間弱気相場パターン
今回のFOMCの声明文では「長期間(for an extended period)」の文言が残り、議長会見では「引き締めのタイミングは示唆しない。行動の前に、数回の会合(a couple of meetings)があるだろう」と述べているが、S&Pの格下げ見通しなど、米国の財政は緊縮方向にならざるを得ないなかで、連銀は緩和姿勢をしばらく変えることはないだろう。
FOMCでドル垂れ流しのバブル政策が確認された以上、投機筋が「株高・コモディティ高・ドル安」のバブル相場に便乗しないわけがない。通貨市場では、ドル安のヘッジとしてのコモディティ買いによって、資源通貨やエネルギー・食料価格連動の金融政策をとっているユーロなどが一段高する可能性が高まっている。円に関して言えば、日本は米国以上に長期間金利の上がらない国なので、株の上昇基調が続くうちはクロス円相場が上昇するだろう。
ゴールド先物(日足)ドル安のヘッジ商品・「株高・コモディティ高」のバブルは続く
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)
注意すべきは、リスク・オンのドル安バブル相場は米国株が支えているので、米国株が売られると資源通貨やクロス円も下落することである。まもなく5月相場に入るが、5月はファンドの中間決算月であり、米国では「一旦、株売りが出やすい月」として認識されている。特に5月6日の雇用統計後は「利益確定売り」が噂されているので注意したい。
さて、筆者のところには「ユーロはまだ上がるのか?」という問い合わせが増えているが、一時は年内利上げの観測もあった米国が長期にわたって政策金利を据え置くとみられ、現在は金利差相場なのでユーロの下支え要因となっている。
ギリシャの2年国債利回りは25%を超えてきているが、25%になろうと100%になろうとギリシャの資金調達は欧州金融安定ファシリティー(EFSF)が行うので関係ない。「ギリシャ国債の金利上昇は、ギリシャの債務再編へのプレッシャーとなり好都合だ」「2013年のヘアカット問題までは、ECBがなんとかするだろう」とのバブル的楽観論が市場を覆っている。
2年国債の25%という金利はギリシャがデフォルトしなければ大変な金利収益となり、金利を目的に買うヘッジファンドもいる。果たしてそんなフリーランチが存在するのだろうか? いずれにせよ、現在ユーロの構造問題は無視されており、ユーロ相場は原油相場、クロス円は株式相場と割り切って取引すべきであろう。
ギリシャ2年国債金利 25%まで上昇!
バーナンキ議長の記者会見での「ガソリン価格に対しFRBが出来る事は多くない」「長期的失業者、金融政策の範疇外だ。FRB、長期失業者に対する手段を有していない」といった発言に不満をもつエコノミストもいる。エネルギーや食料は新興国問題で、かつFRBのインフレ指標から外されている。長期失業者問題は構造問題なので、経済・産業構造が変わらない限り解決できない。議長はいずれもFRBの仕事ではないと考えているようだ。しかし、FRBの専管事項でない為替=ドルについて多くの発言をしているのはやや意外で、急激なドル安(エネルギー価格上昇やトリプル安)に対しては警戒感を持っていると思われる。
バーナンキの米国やトリシェのユーロ圏は、いずれも明確な方針とロジックを持って動いている。市場をうまくコントロールし、今のところは「危機」を封じ込めに成功していると言えるだろう。それに比べると、日本の政策は場当たり的でロジックがなく、現在、火事場泥棒のような増税路線に走っているのをみればわかるように、「空気」で一斉行動を行うので困ったものだ。
さて、相場の実践的な話に移ろう。順張り投資家にとって、久々に溜飲を下げるトレンド相場が連日展開されている。ドルインデックスで日足ベースのドル売りトレンドが発生し(ボラティリティレベルが高いのが気になるものの)、ユーロ、豪ドルなどの通貨でドル安トレンドが強化されている。
ドルインデックス先物(日足)
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)
ユーロ/ドル(日足)原油連動(原油上昇→金利上昇のロジック)
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)
ドル/スイス(日足)ドル安の仕手通貨スイスフラン
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)
豪ドル/ドル(日足)ドルキャリートレードの代表的通貨
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)
日足ベースの円相場はトレンドが明確でなく面白くないが、先週は豪ドルやユーロの上昇でクロス円相場の<1時間足>ではきれいなトレンドが発生しており、短期の時間枠では悪くない相場が展開されている。
ドル/円(日足)半値押しで止まるか、61.8%までやるか?
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)
豪ドル/円(日足)NYダウ連動
上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)
豪ドル/円(1時間足)
上段:14時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21時間ボリンジャーバンド1σ(紫)
ユーロ/円(1時間足)
上段:14時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21時間ボリンジャーバンド1σ(紫)
ユーロ/ドル(1時間足)
上段:14時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21時間ボリンジャーバンド1σ(紫)
ドル/円(1時間足)
上段:14時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21時間ボリンジャーバンド1σ(紫)
強いトレンドが出ているサインは、標準偏差ボラティリティとADXの2本のラインが一緒に上昇しているところである。具体的な売買注文のタイミングは、ボリンジャーバンドで判断する。ローソク足がボリンジャーバンドの1σのラインを外側に飛び出したところがエントリー(新規注文)ポイントとなる。その際、必ず標準偏差ボラティリティとADXのラインの傾きをチェックしてトレンド相場期間であることを確認する。ローソク足が1σの内側に戻ったら、エグジット(決済注文)、すなわちポジションを手仕舞う。
クロス円は高くて買うのが恐いという投資家も、1時間足で勝負すればリスクは軽減される。 標準偏差ボラティリティとADXでトレンドを判定し(トレンドの判定)、ボリンジャーバンドの1σでロスカットを設定(損失限定)し、相場が1σの外にある限り基本的に利食いはしない。相場が1σの外にある限り利益は伸びていく。