3月後半に入りマーケットテーマが変質してきた。マーケットテーマとして浮上したのは、QE2で米量的緩和策が終了するという思惑による「米金利上昇+ドル高」と、日本の電力不足による生産活動停滞と緩和長期化予測を受けた「円の独歩安」である。

米国の量的緩和策の早期終了観測は、3月23日にNY連銀が流動性を吸収する発表(リバースレポ)をしたことで浮上した。翌24日にはバーナンキ議長の定例記者会見を年4回実施するとFRBが発表したことで、「出口戦略に向けた“市場との対話”か?」との思惑を呼んだ。

3月25日にはプロッサー・フィラデルフィア地区連銀総裁が、近い将来における利上げと資産売却の出口戦略を提唱したことで、量的緩和策の早期終了観測が拡がり、その後ブラード・セントルイス連銀総裁、エバンス・シカゴ連銀総裁が矢継ぎ早に「QE2で緩和策を完了すべき」との認識を示したことから、市場の雰囲気は一気に「出口」へ向かいだした。

米10年国債金利(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

冷静に考えれば、住宅市況の低迷・高失業率という問題を抱える米国にあって、バーナンキFRB議長が緩和策を止めて金融引き締めに動くことは考えにくい。QE2を止めれば米金利が上昇し、住宅をはじめ米経済に悪影響を与えよう。しかし、市場は観測が「間違い」であっても一度マーケットテーマに浮上すると1~3カ月はそれで相場をやってしまう。マーケットは善悪や学問の場ではない。人を動かすのは行動心理学であり、間違うのも市場なのだ。

前回のレポートで述べたように、現在ドルインデックス、ドル/スイス、ドル/円は3月半ばで一旦底をつけた形となっている。3月でドルが底を付け、4月以降明確にドル高転換するかどうかはまだわからない。4月相場は乱高下が多いので難しいが、次に14日ADXや標準偏差ボラティリティが上昇する局面で、ドル高になっているのか否かが焦点となる。

ドルインデックス先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13日移動平均3%乖離線(青)


(出所:石原順)

ドル/スイス(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13日移動平均3%乖離線(青)


(出所:石原順)

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13日移動平均3%乖離線(青)


(出所:石原順)

円インデックス(日足)急激な円高から現在は円独歩安へ

上段:14日ADX
中段:21日ボリンジャーバンド1σ
下段:26日標準偏差ボラティリティ


(出所:ストックチャートドットコム)

ドル/円相場は原発事故で円買いに動いたヘッジファンドの買い戻しや機関投資家のヘッジはずしなどで83円台までリバウンド相場になっている。これまで長期的に円が買われてきた最大の理由は日本の「貿易黒字」だが、3月・4月は日本が「貿易赤字」に転落することは必至の情勢であり、経済指標面からの円安に注目するファンド勢も増えてきた。4月以降の日本の経済指標には注意が必要となろう。

ドルインデックスには反転の兆しが出ているが、しぶといのはユーロである。商品市場の上昇から金利先高感があるので大きくは崩れにくいが、「4月7日のユーロ圏の利上げ」は既に織り込まれていると思われる。米国の量的緩和策の早期終了観測は6月まで続くので、そろそろユーロ/ドル相場も反転に注意すべきだと考えるが、どうだろうか?

ユーロ/ドル

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13日移動平均3%乖離線(青)


(出所:石原順)

豪ドル相場は“電車道”相場となっているが、洪水被害の保険金がオーストラリアに環流したことと、最高値を抜けてレンジブレイクが起きたために勢いがついてしまった。5月利上げ観測はあるものの、オーストラリア経済に大きな影響を与える日本や中国の経済状況を考えると上値は買いにくいが、豪ドルは基本的にNYダウ連動銘柄なのでNYダウの動きに左右されよう。

豪ドル/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13日移動平均3%乖離線(青)


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13日移動平均3%乖離線(青)


(出所:石原順)

NYダウ(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)・18日移動平均3%乖離線(青)


(出所:石原順)

明日4月1日(金)には、米国で3月雇用統計が発表される。量的緩和策の早期終了観測が浮上しているなかでの今回の雇用統計は極めて注目度が高い。非農業部門雇用者数と失業率のヘッドラインでドタバタ商いが展開されそうだが、発表後1時間もすれば市場は次の方向性を示唆してくれるだろう。