BTCがお金の地理的限界を突破

中央集権的システム:左 非中央集権的システム:右

 上図の左はホストコンピューターが存在するシステム、中央集権的なシステムです。右はホストが存在しないシステムで、非中央集権的とか分散型システムと呼びます。前者はホストコンピューターが、データが正しいことを保証してくれます。

 後者の場合はネットワークに参加する人がそれぞれ元データを保存していて、不正な取引があったらお互い指摘して排除するという形でデータの正しさを担保します。

 その結果、中央集権的なシステムではネットワーク参加者間のやり取りに必ずホストが間に入ります。AさんがCさんにお金を払おうとしたとき、そのデータは一度ホストを通過し、その際に残高は正しいか確認して、AさんとCさんとの間の残高を振り替えます。

 これに対し、非中央集権的なシステムではAさんからCさんにお金を払う時、データは仲介者を経由することなく、AさんからCさんにデータが送られるだけで完了します。後は、ネットワークと同期化した参加者が、データが正しいかをチェックします。

 これが実はコロンブスの卵で、従来、人々は遠隔地間でお金をやり取りするときに必ず仲介者を必要としていました。

 大昔の貿易船は船に金貨を積んでいました。でも、それでは海賊に狙われて危ないということで、金融機関を仲介にした決済が行われるようになりました。

 例えば、ベネチアの商人はベネチアで預金している銀行のイスタンブール支店経由でイスタンブールの仕入れ先に支払うわけです。この原型は、中東だか中国からきたと聞いたことがありますが、我々が何百年もこうして金融機関に手数料を払い続けてきたことは、美しいベネチアやフィレンツェの街並みに表れています。

 それをついに2009年に、BTCがこのお金の地理的限界を突破したのです。この結果、我々は、ノートルダム寺院の修復やウクライナ政府に直接寄付金を送ることが可能になったわけです。

 次にブロックチェーンです。ブロックチェーンを説明するとき、上記の図を見せられて、データをひとまとめにして、それにタイムスタンプを押してブロック状になったデータを暗号化して…という難解な説明をされることが多いのですが、これはほとんど、自動車の説明をするのにガソリンエンジンの仕組みを説明しているようなものです。

 エンジニアの人は別にして、ユーザーである皆さんがエンジンの仕組みまで知る必要はありません。それこそ「木を見て森を見ず」です。

 先ほどみたように、仲介者を必要としない遠隔地決済を実現した、まさにインターネット上のお金であるBTCですが、お金として通用するために、分散化、すなわちネットワーク参加者みんなで監視する仕組みと、書き換えが難しいデータの2つが必要なのです。

 この書き換えの難しいデジタルデータという夢の技術を実現したのが「ブロックチェーン」という技術なのです。

 世間ではブロックチェーン技術により改ざんできないデジタルデータが生まれた結果、デジタルデータが資産性を持ち始めた、と思われるかもしれませんが、実はその逆で、BTCを設計する上で、改ざんできないデータが必要となり、そこで生み出されたのがブロックチェーンという技術です。

 正確にはブロックチェーンという技術にも開発の歴史があって…というのは、自動車でいうところの、レシプロエンジンの2スト、4ストの違いのようなもので、普通の人には関係がないお話です。