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レンジ相場が急変相場に変わった要因
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

レンジ相場が急変相場に変わった要因

2011/3/17
数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍する石原順氏による外国為替市場レポート「外為市場アウトルック」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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本日の朝方(NY引け後)の相場でドル/円相場は一時76.46円までドル安・円高が進んだ。報道では、日本の震災被害から国内機関投資家のリパトリ(本国への資金還流)動向の思惑ばかりが取り上げられているが、これは人に説明するのにわかりやすいからである。

リパトリのフローはまだ出ていないのが現状で、連想元になっている阪神淡路大震災後の保険額は795億円にすぎなかった。与謝野経済財政相も「生損保の円転のうわさは事実と全く異なる。生損保各社、保険金支払いは国内にある円資産で十分。大震災による生損保の支払い総額、5000億円にも満たない」とコメントしている。

米10年国債先物(日足)米国債はしっかりでリパトリなど起こっていない?

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

では、なぜこんなに急激な円高が起こったのであろうか? その理由は昨日の相場がパニック相場だったからだ。ここまで外人は福島原発の問題に過敏に反応しているが、欧州委員会のエネルギー担当エッティンガー委員の「事実上、制御不能になっている。今後数時間以内にさらなる壊滅的な出来事が起きる可能性があり、人命に脅威を及ぼす恐れがある」という発言が伝わると、市場は一気に緊迫感が高まってしまったようだ。その他、米CNNのTV報道や大使館・米軍の動きなどをリスク回避モードになる材料が重なった。

VIX恐怖指数(日足)米投資家の恐怖心理を表すVIX指数は、一時を突破


(出所:石原順)

NYダウが一時300ドル近く急落するとさらに円買いの動きが強まったが、ドル/円が95年の最安値である79円75銭をブレイクした過程では、ストップ・ロス注文も巻き込んでヘッジファンドが大量の円買いを出したと言われる。

ドル/円(1時間足)

上段:14時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21時間ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

これまでレポートやセミナーで何度か取り上げてきたが、ドル/円相場が80円を割り込む過程では、仕組み債がらみの円買いが自動的に発動されたようだ。リーマン危機前に為替相場参照型の仕組み債と呼ばれるデリバティブ商品が大量に販売されたが、ある価格を超えると顧客の損益が急激に変わるという、「デジタルオプションの地雷」が埋まれているのが、現在の為替市場だ。

ドル/円(日足)80円~72円まで仕組み債のトリガー価格が分布

上段:14時間ADX(赤)・26時間標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21時間ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

詳細は不明だが、米ドル相場を参照するタイプでは、顧客が損を抱え始める(業者の利益になる)トリガー価格が1ドル=72円前後から80円台に並んでいると言われる。為替や日経平均にリンクする仕組み債のトリガー価格はヒットすることが多い。

トリガー価格が断続的にヒットし円高が進むと、今度は早朝の東京勢から見切売りの注文が殺到し、ドル/円は一時76円台まで急落した。この動きを受けて、ユーロ円やポンド円といったクロス円相場も大幅に下落した。

レンジ相場が急変相場に変わるシグナルは14日ADXと26日標準偏差ボラティリティの動きがある程度教えてくれる。逆張りも良いが、相場がもちあいを離れ、14日ADXと26日標準偏差ボラティリティが上昇する局面のトレンド相場は恐ろしい。かならずストップ・ロス注文を置かないと、市場から淘汰されてしまう。

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

3月と8月のクロス円相場は弱い


(出所:石原順)

ドル/円は史上最安値を更新したが、現状ではドル安トレンドが出ている訳ではない。大震災と原発事故という日本の特殊事情で円が独歩高になっているだけだ。投機の円買いポジションはかならず反対売買される。まだ、予断を許さないが、原発危機が収束に向かえば相場は落ち着いてくるだろう。

ドルインデックス先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

それにしても円相場というのはなぜこうも日本人の嫌がる方向に動くのだろうか…。これだけの大災害を受けた日本の通貨が強くなるというのは、どうにも理解しがたい。日本の昨今の円高は、「世界の通貨安競争に負けた結果としての政治的な円高」に思われるが、相場は理屈ではない。この局面は予測を放棄して、ひたすら価格だけみているのが良いようだ。

さて、ここからの焦点は「介入」である。今、日本政府が大規模介入しても誰も反対しない。あのメドレー投資顧問でさえ、「日本は介入せよ」と言っている。一部協調介入の噂もあるが、米国債を売却されても困るので米国も日本の介入に反対しないだろう。一方、この先なんらかの理由でドル/円が76円を超えて円高になる場合、オプションのトリガーをヒットして円高が加速する可能性には注意したい。ストップ・ロス注文は必ず置きましょう。

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