今週は筆者の周辺にいる個人投資家の方達と、最近の相場について話し合う機会をもった。そのなかで、「クロス円の押し目買い」手法については、かなり突っ込んだ話し合いになったのだが、筆者にとっても興味深い話が多かったのでここで紹介したい。

筆者のレポートやブログをご覧の方はご存じの通り、筆者の最も得意とする手法は相場の流れに逆らわずについていく「順張り」手法だ。相場で一番儲かるのは、トレンド相場での順張りだと思っている。

相場で大きな損をする原因は、たいてい「逆張り」手法が原因で、人間の心理に起因するものである。「逆張り」をしてしまうと、心理的に「いつか戻る」という感情が支配するので、損を切れずに大損をしてしまいやすい。

しかし、かならずストップロス注文を置くというルールを厳守できるならば、ある条件の下では「逆張り」も有効となる。

今回のレポートでは、「逆張りが機能する条件」と「円相場の日中のリズム」について筆者の考えを述べるが、相場に絶対の法則はない。これから述べることは、相場の内部的要因のうちの1つの傾向にすぎず、絶対過信してはいけないということを最初に断っておく。

まず、逆張りや押し目買いが機能する通貨を探さなくてはいけない。これまで何度も述べてきたように、昨今の相場でトレンド(方向性)が出にくい商品の代表は「クロス円相場」である。「逆張りを主体とする日本の個人投資家」の円取引量が、世界の円取引量の2割以上となっている現状では、トレンドが出にくいという傾向はますます強まっているといってよい。

「クロス円相場は基本的にNYダウ(米株)と連動しやすい」ので、押し目買いがワークするかどうかは、NYダウの方向性にかかっている。もう一つはATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)の形状だ。

NYダウ(日足)

NYダウはQE2バブルとPOMOによるカネ余り相場が続いており、まさに押し目買い相場が展開されている。


(出所:石原順)

下の円インデックスとユーロインデックスの日足を比較すると、2011年の相場では円相場はほとんど方向性を持っておらず、相場の変動幅もユーロに比べて小さいのがわかると思う。

逆張り手法が機能する条件は、14日のADXや26日の標準偏差ボラティリティが低下傾向で、相場の変動幅の平均であるATR(アベレージトゥルーレンジ)も低下傾向の時である。2011年のこれまでの円相場はこの条件を満たしている。

円インデックス(日足)

上から14日ADX・26日標準偏差ボラティリティ・21日ボリンジャーバンド・20日ATR


(出所:ストックチャートドットコム)

ユーロインデックス

上から14日ADX・26日標準偏差ボラティリティ・21日ボリンジャーバンド・20日ATR


(出所:ストックチャートドットコム)

今年は中国の金融引き締め政策の影響を受けた豪ドル相場もこれまでのところ、方向性が出ていない。円も豪ドルも方向性が出ていないので、豪ドル/円は安心して押し目買いができる通貨ペアであった。

豪ドルインデックス

上から14日ADX・26日標準偏差ボラティリティ・21日ボリンジャーバンド・20日ATR


(出所:ストックチャートドットコム)

豪ドル/円(日足)

上段;21日ボリンジャーバンド2σ(緑)・13日移動平均2%乖離(紫)
下段:20日ATR(1日の変動幅の20日平均)


(出所:石原順)

カナダ/円(日足)

上段;21日ボリンジャーバンド2σ(緑)・13日移動平均3%乖離(青)
下段:20日ATR(1日の変動幅の20日平均)


(出所:石原順)

ニュージーランド/円(日足)

上段;21日ボリンジャーバンド2σ(緑)・13日移動平均3%乖離(青)
下段:20日ATR(1日の変動幅の20日平均)


(出所:石原順)

QE2バブル環境にある2011年前半の相場では、筆者はこれまで株・商品・クロス円の押し目買いを奨めてきた。その押し目買いポイントは「21日ボリンジャーバンド2σ」水準か「13日移動平均3%乖離」の水準だ(利食い幅は特にルールなし)。

しかし、昨今のATR低下相場ではクロス円の変動幅(20日ATRが1円以下の相場が続いている)は極めて小さい。そこで、筆者の周辺にいる個人投資家の方々は、いくつかの通貨ペアでは「21日ボリンジャーバンド2σ」と「13日移動平均2%乖離」のいずれかのバンドをみて押し目買いを行っているという。

ここまでは日足ベースの押し目買いの話であるが、デイトレードについても簡単にふれておきたい(取引時間別の通貨の動き(朝の動き、日中の動き、夜の動き)については、楽天FXの特集ページで詳細を近日公開予定)。

筆者は円相場の「24時間の相場リズム」というのを比較的重視していて、取引の補助として使っている。以前にも時間帯バイアスについてレポートを書いているが、結論を簡単に書いておく。

1日の相場の中で円安になりやすい時間帯(日本時間)は、
AM:9:00~AM:10:00
PM:12:00~PM:1:00
PM:10:00~AM12:00

円高になりやすい時間帯は、
AM:7:00~AM:8:00
PM:2:00~PM:5:00

相場が一方通行となりやすい時間帯は、
AM:4:30~AM:5:00

ポジション調整(相場が反転しやすい)になりやすい時間帯は、
PM:8:30~9:30

である。

このバイアステクニックを応用して、筆者の周辺にいる投資家は今年の相場でかなり優秀なパフォーマンス(円売り主体)をあげている。この方々は筆者が相場のイロハを教えた人達であるが、今年は筆者よりもパフォーマンスがかなりいいので、困ったものである(笑)
デイトレではPM:9:30が重要時間帯で、PM:9:30~PM:10:30の間にクロス円が円安にならない場合、円売りポジションの半分は手仕舞いしてしまうのがよいらしい。残りのポジションもPM:11:30をもって手仕舞いするそうだ。

上記のバイアステクニックは決して普遍的なものではない。相場の構造は常に変化していく。したがって、取り扱いには注意されたい。デイトレのテクニックは体感で会得していて、法則化や文章にするのが困難な部分も多い。あまり、テクニック至上主義になっても墓穴を掘ることが多いというのが筆者の経験だ。相場に対してはいつも柔軟な対応が必要となる。筆者が投資家の皆さんにいつも言っていることは、「ストップロスを必ず置くこと」と「仲間を助けろ」という2つだけである。

豪ドル/円(1時間)


(出所:楽天証券マーケットスピード)