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相場の動く範囲とテクニカルツール
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

相場の動く範囲とテクニカルツール

2011/2/18
数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍する石原順氏による外国為替市場レポート「外為市場アウトルック」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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過剰流動性(カネ余り)相場は、ジリジリ上がっていくという特徴を持つ。また、カネ余りの運用難から押し目は買われるので、急落も起こりにくい。2011年の相場は米国のQE2(量的緩和第二弾)の影響でジリジリ相場となっている。

筆者が為替相場全体の方向性を確認するために見ている指標はドルインデックスである。相場が21日ボリンジャーバンド1σの外側に飛び出し、14日ADXと26日標準偏差ボラティリティが上昇しているときは、相場が方向性を持っているトレンド期間である。チャートを見ると、ドルという通貨は全体としてみると、極めてトレンド(方向性)を持ちやすい通貨であることがわかる。

ドルインデックス先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(紫)

このドルの総合力を表すドルインデックスに近い動きをする通貨ペアは、歴史的にユーロ/ドルとドル/スイスである。従って、この2つの通貨ペアは相場の方向性に賭ける「順張り」手法が適しており、レンジ相場における売られすぎ・買われすぎ局面で相場の方向と逆のポジションをとる「逆張り」には向いていない。

現在、日足ベースでみるとドルインデックスもユーロ/ドルもADXと標準偏差ボラティリティが共に下落するという典型的な調整相場となっており、方向感のない局面となっている。全体としては方向感がないなかで、比較的堅調な相場となっているのがクロス円相場である。クロス円の相場は基本的に株との連動性が高いので、NYダウが上昇基調にある限り堅調に推移する。

NYダウは砂上の楼閣と言われながらも、その上昇を連邦準備理事会(FRB)やNY連銀がサポートしており、「バーナンキ・プット」をあてにした投機筋の押し目買いによって堅調な相場展開となっている。米国経済に対して悲観的な見方をとっている著名投資家のマーク・ファーバーでさえ、「米国債とドルは長期的には破綻するが、今後2~3カ月は上昇する」と予想している。ドルも株もQE2がもたらす過剰資金によって当面は上昇基調が続く可能性が大きい。

今週公表された1月のFOMC議事録には「今年の成長率予測を引き上げるも、雇用市場には引き続き失望」「米経済回復の確信は増しているが、失業率を大幅に押し下げるには十分ではない」と記されており、雇用の大幅な改善がない場合は、QE3を実施する可能性も示唆している。

1月のレポート『世界のマネーはどこに行く?』に「今年は意外にも先進国の株式市場に投資しているファンドが多い。新興国の経済成長が今後も続いていくのは間違いないが、今年に限って言えば、筆者の周辺にいるファンドは利上げサイクルに入っている新興国の株式市場を避け、先進国の株への投資を行っているところが多い。先進国への株式投資のキーワードは、<アングロサクソンの国>である。具体的には米・英・オーストラリア・カナダの株式市場だ。ここに多くを配分し、2番手がユーロ諸国、3番手が新興国となっている」と書いたように、今年の投機マネーはアングロサクソンの国(米国・英国・オーストラリア・カナダ)に向かっている。

この投機マネーのフローを映して、通貨市場もアングロサクソン国の通貨は堅調に推移している。この傾向はしばらく続きそうなので、アングロサクソン通貨は、(株の調整局面を狙った)押し目買い戦略を維持したい。

以下はアングロサクソン通貨である豪ドル/円とカナダ/円のチャートである。クロス円相場はドルインデックスやユーロ/ドルの相場と比べるとADXや標準偏差ボラティリティの波形が美しくなく、方向性を確認しにくい。これは、即ちクロス円相場においてはレンジ・トレーディングや逆張りがある程度機能することを意味している。

豪ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド2σ(灰色)

カナダ/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド2σ(灰色)

投資家の方から「では、今年のクロス円相場は逆張りですね」とよく聞かれるが、そうではない。カネ余り相場では上値を売る逆張りは危険である。QE2のバブル環境が続く年前半は逆張りではなく、「押し目買い」が正解となるだろう。

クロス円の周期的な底をとらえて買うポイントは、21日ボリンジャーバンド-2σの水準か、13日移動平均-3%乖離の水準である。そのセオリーから言えば、現在のクロス円相場はやや買われすぎの状況にあり、すでに買いポジションを持っている人はともかく、新規に買い参入するのは、短期売買に限定した方がよいだろう。

さて、ブログ『石原順の日々の泡』にも書いたが、トレードツールの新バージョンである『石原順のトレードツールNEWβ.XLS』が完成した。

新しく付加したテクニカル指標「エンベロープ(移動平均乖離)」は移動平均線を一定の割合で上下に乖離させたテクニカル指標である。「価格が移動平均線から乖離しすぎると、平均に戻ろうとする力が働く」という平均回帰の考え方から、エンベロープで「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」を判断し、逆張りや利食いのポイントとして利用されている。

相場の動く範囲を観察すると、<1時間足>での通貨の変動は概ね13時間移動平均線の±0.8%乖離の範疇で動くといわれている。最近は相場の変動率が低下傾向で、±0.5%がコアレンジとなっている。また、<5分足>での通貨の変動は概ね13本(65分)移動平均線の±0.3%乖離の範疇で動くが、最近の相場では±0.2%がコアレンジとなっている。

<日足>ベースでは(強いトレンドが出ていない相場の場合)、概ね13日移動平均線の±2%乖離のバンドの中で動くという傾向を持っている。13日移動平均線3%乖離に21日ボリンジャーバンド2σを組み合わせると、より相場の輪郭がはっきりしてくる。

また、通貨の相場にトレンドが出た場合、21日ボリンジャーバンド2σ(2std)の拡がりは、13日移動平均線の3%乖離と同じレベルに留まるパターンが多くみられる。筆者は13日移動平均線3%乖離と21日ボリンジャーバンド2σ位置が近く、その近辺に相場があるときは、短期的には相場反転リスクが高い局面であると考えている。

相場は拡大と収縮と平均回帰を繰り返す。一見、無茶苦茶に動いているように見えるマーケットだが、そこには「限度」と「リズム」がある。筆者の「順張り」および「逆張り」の取引手法は、概ねこのトレードツールのテクニカル指標を使っている。相場に絶対の法則はないが、このトレードツールが皆さんのトレードに優位性を与えてくれると信じている。興味のある投資家は、ぜひ利用していただきたい。

ユーロ/ドル(日足)

ユーロ/ドル(日足)トレードツールの設定画面

ユーロ/ドル(1時間足)

ユーロ/ドル(1時間足)トレードツールの設定画面

当ツールはあくまでも石原順が個人として利用しているトレードツールであり、商用・配布用に作成されたツールではありません。MSーEXCELの動作環境に対するご質問やクレーム等は、物理的な時間がなく対応できませんので、ご遠慮くださいますようお願いします(ご利用は自己責任でお願いします)。

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