3月の変調

 このように、ウクライナ紛争の長期化、米利上げ、3月は最弱月のアノマリーといった3重苦を跳ね返しての陽線引けとなった。その理由は紛争や金融引締めといったネガティブ材料に対する反応が変わってきたことにあると考える。

 まずウクライナ問題に対する基本的な反応だが、戦争といったリスクオフイベントに対しBTC相場は基本的に脆(もろ)い。投資家がリスク量を減らそうとする際、ボラティリティが高い暗号資産のポジションを減らすのが手っ取り早いからだ。

 今回も2月の戦闘開始時には3万4,000ドル(約400万円)台まで値を下げた。しかし、その後、停戦をめぐる状況に振らされながらも、徐々に上昇基調に乗り始めている。

【グラフ2】2018~2022年の経済ショックとVIX指数

出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 これは市場が戦闘の長期化を織り込み、リスクオフではなくなりつつあることも影響している。上の【グラフ2】は、恐怖指数と称される米株先物のボラティリティの推移。今回の紛争で40程度まで上昇したが、足元では巡航速度とされる20近辺に下がっている。

 また、ルーブル危機によるロシア国内からの資本逃避にBTCが利用されたことも2月末から3月初にかけて発生した。

 ただし、別稿「ビットコインは投資の逃避先?ウクライナ・ショックで表面化した暗号資産の存在意義」で言及したように、その規模は限定的で、ルーブル安が一服するにつれ足元ではルーブル建てのBTC取引の出来高は減少しており、一過性の動きだったもようだ。

 同稿では、今回の経済制裁は両刃の剣で「外貨準備のドル離れ」と「国際決済のSWIFT離れ」を誘発すると指摘した。暗号資産業界から同様の意見はあまり聞かれず、小職が先走ったのかと思っていたら、思わぬ援軍が現れた。

 ブラックロックのラリー・フィンクCEOがロシアの侵攻やその後の経済制裁を踏まえ「各国で(従来の)通貨に依存することを再考する動きが加速するだろう」と予想し「緻密に設計されたデジタル決済システムは、マネーロンダリングや詐欺のリスクを軽減しつつ、国をまたぐ決済を強化することができる」と指摘した。

 世界最大のヘッジファンドBridgewaterのレイダリオCEOも暗号資産市場への参入を表明した。こうしたウォール街からの先を見通した買いが3月相場上昇の背景にあると思われる。