今週、多くの金融業界の人にお会いした。万年強気の人が多い業界とはいえ、来年の相場(特に株式)について強気の見方をとっている人があまりに多く、筆者は腰を抜かしている。業界の皆さんの意見を集約すると、「バブルしている債券から株式への資金シフトが起こるだろう」ということになる。

内外から批判を浴びたFRBの量的緩和第2弾(QE2)だが、先週金曜日にバーナンキFRB議長が米CBSテレビとのインタビューで「6,000億ドル超の米国債購入を否定せず」と述べたことで、バーナンキFRB議長はとことん金融緩和をやるつもりだとの見方が優勢になった。また、ブッシュ減税の延長が決まったことで、財政も出動しバブルを作っていく意思が確認されたと投機筋は見ている。米金融機関のレポートも軒並み「強気」に変化しており、「バーナンキプット」を当てにして皆がバブル相場に参入しようという機運が出てきたことは確かだ。

米国も日本も金融緩和を当分維持していくことは確かであり、一言で言うと、現在の相場は世界的な過剰流動性(バブル)相場といえるだろう。過剰流動性相場では、買われすぎると売られ、売られすぎは買われるというレンジの需給相場が繰り返されるので、相場の振幅は今後小さくなっていくかもしれない。筆者は相場が上がっても下がっても別に構わないが、トレンドとレンジが比較的はっきりした相場になってくれることを期待している。

株式相場に強気な人が増えたのは、銀行株が買われているからである。米国の長期金利が上がり、長短金利の利ざやが拡大したのを好感して銀行株が買われているらしい。金利が上がると金融機関が今まで買ってきた長期債には損が出るので、金融機関の業績がそんなに良くなるとは思わない(金利上昇期の金融機関の収益はよくない)が、相場がいいとこ取りの都合のよい解釈をするバブル相場に転換したことのサインかもしれない。

NYダウ先物(日足)


(出所:石原順)

フィラデルフィア銀行株指数(日足)


(出所:石原順)

米国の利回り曲線


(出所:フィナンシャルタイムズ)

米10年国債金利(日足)

上がったといっても10年持って3.2%ですが…


(出所:石原順)

現在の米金利の上昇を、良い金利上昇ととらえるか悪い金利上昇ととらえるかで意見が分かれているようだが、米景気の回復期待と米財政悪化懸念のどちらをとっても金利上昇の方向には変わりがなく、上げ下げを繰り返しながらも、当面、米長期金利は下がりすぎ修正のリバンウンド局面が続くのではないかと筆者は見ている。

この見方が正しければ、ドルはしばらく下方硬直性の強い展開となるだろう。直近の外為市場は、ドルの下がりすぎに対する修正相場が一段落して小康状態となっている。日足ベースでは相場にトレンド(方向性)は出ておらず、ドルインデックス、ユーロ/ドル、ドル/円のいずれのチャートも21日移動平均線に接近してきている。

過剰流動性相場なのでリスク許容度は上がっているが、マーケットではあいかわらずユーロ圏の悪材料が囁かれている。株が上がっている日にはあまり反応しないユーロ圏の悪材料だが、引き続き警戒したい。また、中国の11月主要経済指標の発表が13日から明日に前倒しされており、今週末にも中国人民銀行が利上げをするとの観測が広がっている。来週からは流動性が極端に落ちてくるので、下値リスクに警戒が必要だろう。

ドルインデックス(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ユーロ/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)