早いもので、もう1年が過ぎようとしている。今年の外為市場はドル相場のトレンドが比較的はっきりしており、順張り(トレンドフォロー)取引を行っている投資家にとってはまずまずの相場が展開された。しかし、円(クロス円)相場に限っては、これは当てはまらない。2月と5月の円高相場を除いてはダイナミズムに欠ける相場であったといえよう。

ドルインデックス先物(日足)年前半ドル高・年後半ドル安の展開に…


(出所:石原順)

トレードで毎年安定した成績を上げるためには、

  • (1) 売買手法に対する絶対的な信頼をもつ
  • (2) 世界のあらゆる市場に分散投資する

の2点がカギとなるが、筆者は来年もなるべく多くの商品をトレードしたいと思っている。集中投資の場合、儲からないわけではないが、パフォーマンスは非常に不安定になる。ある年は大儲けし、ある年は大きな損が出るなど、パフォーマンスのドローダウンが大きい。また、1つの商品(銘柄)だけ取引していると、損失が続いた時に嫌になってしまう。AやBという商品で損をしていても、Cが儲かっていたら、しんどいがなんとか耐えられるものだ。

筆者が取引手法として使っている「Bollinger Bands Trigger with STD(ADX)」などの順張り手法も、日経225先物やドル/円といった1つの商品だけをトレードしていても、儲かる年と儲からない年の繰り返しのような結果になってしまうだろう。この傾向は、どんな手法を使っても変わらない。毎年安定的なパフォーマンスを残したい投資家は複数の商品に分散投資をするべきであるというのが筆者の考えだ。

今年の相場はユーロ様々であった。昨年末から今年10月までのユーロ/ドルのトレンドの美しさは、特筆に値する。ユーロ/ドルの相場に匹敵するトレンドが発生したのは、上海株と大豆相場である。そして、出口戦略や量的緩和再開で騒がしい展開となった米10年国債先物相場も、2010年は素晴らしい相場展開となっている。基本的にこれらの商品は今後もトレンドが発生しやすいと思われる。来年も運用ポートフォリオの中に入れておきたい。

多くの商品(銘柄)を取引するには、取引手法を単純化・普遍化することが大事である。数十もの商品を分析する能力や時間が筆者にはない。『先物市場のテクニカル分析』を書いたジョン・J・マーフィーが「テクニカル分析の大きな力の一つは、その普遍性にある。日計りのトレーディングにも、数年にわたるトレンド分析にも有効なのがテクニカル分析である。テクニカル分析をもってすれば市場間あるいは国際間の境界線を渡ることはいとも簡単である」と1980年代に語っていたが、今やCTA(商品投資顧問)の70%はテクニカルやアルゴリズムを用いたトレードスタイルとなっている。

チャートもニュースもいらない数学的なトレードモデル
ユーロ/ドル(DAILY)


(出所:石原順)

ドル/円(DAILY)


(出所:石原順)

日経225先物(DAILY)


(出所:石原順)

以下は、代表的な商品の今年の日足である。

このチャートをみて何を感じるかと言うと、「相場の渦中にいる時は必死だったが、後から見ると非常に簡単である」ということだ。涙が出てきそうである。

ユーロ/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ドル/スイス(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

豪ドル/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

ユーロ/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

 

豪ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

 

日経225先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)

 

NYダウ先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)

 

米10年国債先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

 

上海総合指数(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)

 

ゴールド先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)

 

原油先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)

 

大豆先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)

 

小麦先物(日足)

上段:14日ADX(赤)・26日標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド0.6σ(緑)


(出所:石原順)

ユーロ/ドルやドル円相場に対して、どこまで行きますか? との照会が多いが、ユーロがこれだけ下がったのは材料もあるが、上げすぎの反動が大きいような気がしている。あとは、CTAの自動売買のせいだろう。ロボット君には感情がないので、ガンガン攻めてくる。一方、ドル/円のほうは平均値のCentering(センタリング)でサイクルを抽出すると、現在、周期的な反発時期を迎えているといえよう。あと1カ月くらいはドル高が続いてもおかしくないだろう。

ドル/円(日足) 現在、周期的なドル反発局面に


(出所:石原順)

統計的に正しく移動平均線を引く方法は、『先物市場のテクニカル分析』の254ページに載っている。