15年ぶりの円高を巡って、政府の取り巻きからの催促やマスコミの報道がうるさくなってきた。さすがにそろそろ何かやるだろうという思惑や警戒感が出てきて、ドル/円相場は余談を許さないものの、小康状態となっている。

円高やデフレが悪のようにいわれているが、企業は円高で海外企業を買収すればよいし、個人は郊外なら2,000~3,000万円台で戸建て住宅が買える時代になっている。これはいいことだ。しかし、この事態を放置しておくと、日本全体が空洞化現象でシャッター商店街のようになり、日本のGDPは「ALLWAYS三丁目の夕日」の頃の水準に向かって縮小していくだろう。

円高対策として、日銀が昨年12月に導入した新型オペの規模の拡大が話題となっているが、海外勢は「もはや日銀の金融緩和だけで円高を止めるのは困難」とみている。海外のファンド筋が警戒しているのは、みんなの党が用意している「デフレ脱却法案」であり、仮に民主党がこれに乗っかって法案が成立すると、相場が一旦円安に反転する可能性が高いとみている。したがって10月は相場の反転リスクに注意が必要だ。

民主党は経済音痴と言われているが、この先、下手な補正予算など組むより、費用対効果を考えると円売り介入をやったほうがよいだろう。教条主義に陥って、円高がよいとか、円安がよいとかいっていてもしょうがない。長年、中国や韓国の通貨安による安上がりの経済成長を見てきた先進主要国は、こぞって通貨安に舵を切っている。世界的な需要の減少と経済のブロック化のなかで、通貨安競争は熾烈を極めていくと思われるが、日米欧のどこもが通貨安を志向しているため、ここにきて通貨のトレンドが見えにくくなっている。

ドル/円相場は60カ月移動平均-20%乖離水準で足踏みを続けており、現在の相場から一気に「たまげた線」まで円買いで攻めてよいものか、投機筋も思案中である。

ドル/円(月足)60カ月移動平均線乖離

10%乖離(緑)・20%乖離(青)・30%乖離(赤)


(出所:石原順)

ドル/円相場の日足のほうは円買いのトレンド期間中であるが、日足相場の反転ポイントである13日移動平均-3%乖離線にタッチしたあとは小康状態が続いている。

ドル/円(日足)

上段:14日ADX(赤)と標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13日移動平均3%乖離線(青)


(出所:石原順)

ユーロ/ドル相場は直近の上げ幅の半値押しで相場がとまっているが、この水準ではファンドが買い戻しに動いたようだ。現在、ADXと標準偏差ボラティリティの動きも力強さがなく、へタってきているので注意したい。

ユーロ/ドル(日足)とフィボナッチのリトレースメント


(出所:石原順)

ユーロ/ドル(日足)

上段:14日ADX(赤)と標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)

筆者は現在、ユーロ売りのポジションをもっているが、その主力は円とスイスである。この2つの通貨は不景気になるといつも消去法的に買われやすい。相場がボリンジャーバンド1σを飛び出し、ADXと標準偏差ボラティリティも上昇しているので相場に参入しているが、果たしてトレンドは大きくなるだろうか?

ユーロ/円(日足)

上段:14日ADX(赤)と標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)・13日移動平均3%乖離線(青)


(出所:石原順)

ユーロ/スイス(日足)

上段:14日ADX(赤)と標準偏差ボラティリティ(青)
下段:21日ボリンジャーバンド1σ(緑)


(出所:石原順)