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円相場のボリンジャーバンドが拡大・トレンド相場に発展するのか?
石原 順
外為市場アウトルック
リーマンショックの影響による景気回復に向けた歳出の増大が、世界中で財政赤字の拡大を招いた。政治家は財政再建をしなければならず、その結果、景気対策は中央銀行に押し付けられることにな…

円相場のボリンジャーバンドが拡大・トレンド相場に発展するのか?

2009/7/10
数社の海外ファンドの運用を担当する現役ファンドマネージャーとして活躍する石原順氏による外国為替市場レポート「外為市場アウトルック」。お客様の投資のヒントにお役立てください。
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ボリンジャーバンド(標準偏差バンド)を使った最も大きな収益機会は、ボリンジャーバンドが「収縮」から「拡大」に転じる時である。これを相場の世界では「保合(もちあい)放れ」と呼んでいる。現在の相場が方向性を持っているか否かの判定は、相場に素直についていくという「トレンドフォロー」の売買手法を行う上で成否を決めるポイントとなる。

ドル/円(日足)

上段:26日標準偏差ボラティリティ(青)14日ADX(赤)
下段:26日ボリンジャーバンド


(出所:石原順、ブルームバーグ)

筆者は26日標準偏差ボラティリティを用いて相場認識を行っている。相場に方向性が出てくると標準偏差ボラティリティは上昇する。この標準偏差ボラティリティが上昇している期間(上のチャートの黄色い部分)がトレンド相場である。26日標準偏差ボラティリティが低い位置から上昇する場合は、相場が保合を放れて強い方向性をもつシグナルとなる。

一方、標準偏差ボラティリティがピークアウト(天井をつけ下落)すると、トレンド期とはやや逆方向にバイアスがかかった「横這いレンジ内での乱高下相場」(上のチャートの水色の部分)となりやすい。

ただし、あくまでそのような傾向があるといった程度にとらえ、過信することは厳に慎みたい。標準偏差ボラティリティにも相場に用いる上で注意すべき落とし穴がいくつかある。

標準偏差ボラティリティの計算方法については、6月17日のネット勉強会「外為市場の動向と実践的な取引テクニック」で説明しているが、この計算が面倒な投資家は、新しくリリースされるマーケットスピード対応FXのテクニカルツールの(「DMI」の中にある)「ADX」を代用してもよいだろう。

「マーケットスピード対応FX画面」 26日ボリンジャーバンド


(出所:楽天証券)

「マーケットスピード対応FX画面」 14日ADX


(出所:楽天証券)

外為市場はこのところ変動率が上がらない相場が続いてきた。トレンドフォローの代表的なファンドであるFXコンセプツやジョン・W・ヘンリー社(昨年は最高の収益を上げたといわれている)といったファンドも、今年の相場では苦戦が伝えられている。「両ファンドは通貨のトレンドを見いだすコンピューターモデルや相場の勢いを追う手法を活用しているが、今年は外為市場が相対する方向に引っ張られて明確な方向性を示していないため打撃を受けている」(ブルームバーグ)と報道されているように、今年のFX市場は昨年の大変動の反動から小康状態が続いている。

しかし、少なくとも円相場に関しては、久々にトレンドが発生しそうな状況(トレンドが大きくなるかどうかはわからない)にある。今週、7月8日のロンドンフィックスにかけて円相場は急伸した。94円から92円までに並んでいたストップ・ロス注文やオプションのトリガーを断続的にヒットし、ドル/円は92円を割り込む大相場となった。原油相場が崩れたのを契機に、市場の需給的な内部要因でリスク資産がいっせいに売られた格好となっている。

原油先物(左)と米SP500株価指数(右)

上段:26日ボリンジャーバンド
下段:26日標準偏差ボラティリティ(青)14日ADX(赤)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

豪ドル/円(左)とドル/円(右)

上段:26日ボリンジャーバンド
下段:26日標準偏差ボラティリティ(青)14日ADX(赤)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(左)とポンド円(右)

上段:26日ボリンジャーバンド
下段:26日標準偏差ボラティリティ(青)14日ADX(赤)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/ドル(左)とポンド/ドル(右)

円相場のようなトレンドは発生していない


(出所:石原順、ブルームバーグ)

先週から今週のシカゴの通貨オプション市場では、ボラティリティ(変動率)を売っていたファンド勢が、ポジションの半分以上を手仕舞って利益確定に動いている。彼らは今後ボラティリティが上がることを警戒しているようだ。ドル/円およびクロス円市場は、「変動率が上昇すると円高傾向・変動率が低下すると円安傾向」というのがセオリーであり市場の構造だ。円キャリー取引のリスクが高まっていることに投資家は注意すべきであろう。

未曾有の金余り相場なので油断はできないが、外為市場は久々にトレンドの出そうな気配? となっている。筆者はストップ・ロス注文をおいて円買いポジションを持っている。儲かるかどうかはわからないが、筆者にとって現在のような円相場の保合放れの局面では収益機会なので出動しなければならない。1カ月から3カ月の市場参加者の平均コストを示唆する「移動平均リボン」をみていると、原油やクロス円市場の買い方のポジションは“しこってしまった”ようだ。

ドル/円(日足)と移動平均リボン


(出所:石原順、ブルームバーグ)

こうなると、しばらく高リスク資産の上値は重くなるだろう。ドル/円相場でみると、相場が早期に93円50銭から94円の抵抗を上回らない限り、戻り売りスタンスを継続したい。

今年の相場でリスク資産の売り方が苦戦しているのは「信用リスク」が上がらないからだ。原油相場の天井感から各市場に波及しつつあるリスク資産売りのトレンドが強化されるには、再び「信用リスク」が高まることが必須となる。しかし、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)のドル金利やフィラデルフィア KBW銀行株指数を見ている限りでは「信用リスク」は高まっていない。「信用リスク」が高まらないうちは円高も限定的になるだろう。
米国は決算シーズンを迎えているが、金融機関の決算内容には特に注目したい。今後の最重要イベントは、中央銀行バブルの行方を決める7月21日のバーナンキの議会証言と8月11日のFOMCである。

フィラデルフィア KBW銀行株指数(左)とロンドン銀行間取引金利(LIBOR)3カ月物のドル金利(右)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年7月9日まで)

ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯

ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
(出所:石原順、ブルームバーグ)

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