ビットコイン急落は金融相場終焉の合図

 今年に入り、最も象徴的な値動きを演じている投資対象の一つに、暗号資産が挙げられます。以下のとおり、足元、主要銘柄であるビットコイン、イーサリアム、リップルの価格は、急落状態にあります。

図:主要暗号資産の価格推移 (2021年12月31日=100)

出所:Investing.comデータをもとに筆者作成

 ビットコインは、昨年秋に米国などで先物のETF(上場投資信託)が上場しました。これを機に、現物市場でも資金流入が進み、価格上昇が期待されていましたが、実際は上図のとおり、秋から冬にかけて、下落しています。

 ビットコインを含む暗号資産価格の下落には、いくつか理由がありますが、最も大きな理由は、米国の金融政策の方針が、本格的に引き締め方向に進み始めたことだと、筆者は考えています。暗号資産は、どの国の信用も必要としない「無国籍通貨」です。

 昨年秋ごろから、世界で最も多く使われている通貨「米ドル」の金利や流通量を調節する機関(米国の中央銀行にあたるFRB[米連邦準備制度理事会])が、金利を引き上げる(利上げ)、社会に放出する量を減らす(金融緩和縮小)ことを本格的に議論し始め、一部を開始しました。

 FRBのこうした動きは、米ドルの先高観や保有妙味を醸成すると同時に、相対的に「無国籍通貨」の保有妙味を低下させるきっかけになっていると考えられます。昨年の秋から冬にかけて、暗号資産の価格推移が軟調になったのはこのためです。

 そして、年初から、暗号資産の価格下落に勢い付いたのは、FRBが米ドルを社会から吸収すること(金融引き締め)を検討し始め、これまで以上に、米ドルの先高観・保有妙味が強まったためだと、考えられます。

 ビットコインをはじめとした暗号資産の価格上昇は、「投機筋のなせる業(わざ)。市場全体に強いリスク・オン」という印象がありました。逆に、暗号資産の価格下落は、「投機筋の活動縮小。市場全体に強いリスク・オフ」を強く印象付けています。

 足元の暗号資産の価格急落は、2020年春から2021年後半にかけて発生した、市場全体を覆った「金融相場」が、終わりを迎えた合図であると、筆者は考えています。株価急落の遠因とも言えるでしょう。