生産効率の頭打ち感が鮮明に

 以下のグラフは、米国のシェール主要地区における、新規1油井あたりの原油生産量の推移です(7地区平均)。仕上げ後、生産が始まってまもない井戸1つあたりの原油生産量で、新規油井の生産効率を示しています。

 また、待機井戸(掘削は完了したが仕上げを行っていない井戸)の推移を併記しています。

図:米シェール主要地区の新規油井の生産効率と待機井戸

米シェール主要地区の1油井あたりの原油生産量は、EIAが提唱する7地区の平均

出所:EIAのデータをもとに筆者作成

 新規油井の生産効率を示す、新規1油井あたりの原油生産量は高水準ではあるものの、低下傾向にあります。このことは、原油を効率よく生産することができる良質な待機井戸が減少していることを示唆しています。

 また、待機井戸そのものが、減少に転じているため、開発業者たちが、新たに掘削をするよりも、既存の待機井戸に仕上げを施すことで、生産にこぎつけようとしていることがうかがえます。

「脱炭素」の潮流が、リグを稼働させて井戸を掘る行為を停滞させている可能性があります(新規開発の鈍化)。さらには、待機井戸に仕上げを施すことに重点を置き、開発は進んでいるものの、その効率も頭打ち状態…というわけです。

 米国は世界No1の産油国です。その米国の原油生産量のおよそ70%を占めるシェール主要地区の原油生産量は、原油価格が大きく回復しても、回復途上のままです。

 この点は、米国における大きな供給制約です。政治起因であるため、リーダー達の方針が変わり、「脱炭素」の潮流が緩まない限り、米国の原油生産増加は難しいと、筆者は考えています。