米シェールは回復途上

 ブルームバーグのデータによれば、世界トップ3の原油生産国は、米国、ロシア、サウジです(2021年12月時点)。シェアは、米国が14.4%、ロシアが13.6%、サウジが13.5%です。今、このトップ3カ国(シェア合計41.5%)において、供給を制約する事案が発生しています。

 米国は、バイデン氏の米大統領選挙の勝利宣言(2020年11月)以降、パリ協定に復帰したり、より厳しい温室効果ガスの削減目標を率先して打ち出したりするなど、「脱炭素」を急速に進めてきました。

 こうした中で、「モノ言う株主」による環境配慮に関わる提言も目立つようになり、関連企業が石油開発を推進することが、世界全体や米国国内の風潮にそぐわないとの指摘が目立つようになりました。

 バイデン氏が大統領になって以降、これまでにも増して、米国国内の石油戦略備蓄の取り崩しが進んでいますが、このことは、「脱炭素を推進する国が、石油備蓄を積み上げておくことは自己矛盾に等しい」という文脈の上で、行われていると筆者はみています。

 米国では、「脱炭素先進国」をうたうべく、リーダー達が頑張っているわけです。米国全体のおよそ70%を占めるシェールオイル主要地区の原油生産量(7地区合計)が、2020年春に発生したコロナショックによる急減の後、回復しきっていないのは、リーダー達の「脱炭素」推進にかける強い思いが一因だと考えます。

図:米国の原油生産量 千バレル/日量

米シェール主要地区の原油生産量は、EIAが提唱する7地区の合計

出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

 米国の原油生産量は、2020年5月にコロナショック後の最悪期を迎えた後、徐々に回復傾向にあるものの、その回復の度合いは、原油相場の回復や需要回復の流れに劣後しています。

 2010年ごろにシェール革命が起きてからしばらくは、「原油相場が上昇すれば、米国の原油生産量は増える」という定説めいたものがありましたが、現在はそうではありません。次より、米シェール主要地区の開発に関わるデータを確認します。