注目のG7は声明で「主要通貨において時として急激な変動があり、経済や金融の安定へ与え得る影響について懸念している」と為替の表現を4年ぶりに変更して為替変動に警戒感を示した。フランスを中心とするユーロ圏の不満を考慮した声明となったが、米国は現在「財政緩和・金融緩和」の<恐慌阻止>政策をとっており、ポリシーミックスからはドル安(通貨安)が整合的である。また、欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのウェーバー独連銀総裁が「現在の環境で利下げ余地はない」と発言しているように、<インフレを警戒>するユーロ圏では利下げ観測が浮上してこない。ポリシーミックスと矛盾しているので「声明はドル安緩和の時間稼ぎにすぎない」いう意見も多いが、それはG7声明をあまりに過小評価しているといえよう。G7各国の温度差に変化があることから「G7での協調行動はできない」との見方が多いが、今後、株式相場の暴落があればすぐに協調行動にでるだろう。バーナンキ・プットと同じくG7もプットオプションなのである。

米国に利下げ打ち止め観測が出てこない限りは金利差からのドル安方向にバイアスがかかり続けるが、ここにきて変化があったのは米国の金利(国債)市場である。4月17日のマーケットでは、4月30日のFOMCでの0,25%の利下げ(FF金利2.0%)で年内は打ち止めという見方が半数を占めている。また、ここにきてバーナンキFRBの利下げの行き過ぎを懸念する要人発言やレポートも多い。この変化をうけて、外為市場では金利差からの強いドル安圧力が若干緩和されつつある。

米金融機関の決算発表も本日18日のシティグループに不安があるものの、これまでの決算発表は悪いながら予想の範囲内となっている。現在、部門売却・リストラ・資本増強・G7での国際金融システムの監視と米金融機関の<スケールダウン>は確実に進んでいる。歴史的には中南米危機の時のシティバンクを想起させる事態となっているが、4月17日の英フィナンシャル・タイムズの報道では「シティグループのビクラム・パンディットCEOが、同行のコストベースを最大20%削減する方針を明らかにした」と報じている。今後、<スケールダウン>によってシティグループが収益モデルを作ることができれば、バブル期の<スケールメリット>ビジネスに懲りた各金融機関は皆「右に習えする」だろう。逆にシティグループが<スケールダウン>経営に失敗すれば金融不安が再燃し、バブル崩壊後の日本のように金融機関の連鎖破綻と大合併がまっている。その意味でシティグループの動向は金融セクター全体の命運を左右するといえよう。

外為市場はたいした材料でなくても「いいとこどり」するNY株式市場に引っ張られて、徐々にリスク収縮が緩和されてきている。筆者は標準偏差ボラティリティの低下時は、ボリンジャーバンドのレンジの中での短期売買を行っている。しかし、そろそろ標準偏差ボラティリティも下限近くまで低下してきており、ボラティリティの上昇があれば相場の方向についていきたい。

ドル/円(日足)標準偏差ボラティリティの推移


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)ポリンジャーバンド


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)標準偏差ボラティリティの推移


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円(日足)ポリンジャーバンド


(出所:石原順、ブルームバーグ)