「カジノ資本主義」・「ファンド資本主義」と呼ばれたバブル相場の逆流が起きている。このようなマーケットで起こることは、行動ファイナンス理論からいえば、リスク圧縮、新規投資敬遠といった損失回避行動である。現在、外為市場で起きているキャリー・トレードの縮小傾向もその1つである。

下のチャートはCBOE (Chicago Board Options Exchange)で取引されているSPX VOLATILITY INDX(俗称:恐怖指数)の推移であるが、昨年7月から4連発で大きな信用収縮による損失回避行動があったことを物語っている。外為市場ではこの過程でハイ・レバレッジのキャリー・トレードを行っていた投資家は大きな損失を被る結果となった。

VIX恐怖指数(日足)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

VIX恐怖指数(週足)1992年~2008年


(出所:石原順、ブルームバーグ)

このVIX(恐怖指数)をもう少し大きなタームでみてみると過去にはVIXが50近くまで上昇した局面が数回あった。1997年のアジア通貨危機、 1998年のロシア危機とヘッジファンド=ロングターム・キャピタルマネージメントの破綻、2001年のエンロンの破綻、2002年のワールドコムの破綻時である。現在の信用不安相場もこの指数が示唆する限りではまだプロローグかも知れない。

フィラデルフィア銀行株指数(日足)


(出所:石原順、ブルームバーグ)

フィラデルフィア KBW銀行株指数は、調整時価総額加重平均指数。取引所およびナショナル・マーケット・システム上場のマネーセンター・バンクと地方の主要金融機関 24 銘柄で構成され、金融セクターのパフォーマンスを表す。

フィラデルフィア銀行株指数の推移からみても金融株が抱えるみえないリスクは解消しておらず、相場が波乱含みである状況が続いている。

ドル/円(日足) 標準偏差ボラティリティ(13日・26日・55日)とADXの推移


(出所:石原順、ブルームバーグ)

ドル/円相場は標準偏差ボラティリティやADXの頭打ち傾向からみると、ドル急落相場もいったん終息した形となっている。足元では98~100円をコアレンジとした方向性のない展開が続いているが、依然ボラティリティレベルが高く歴史的に波乱含みの3月期末から1週間の動きには注意したい。

現在、時間のもたらす不確実性は増大中であり、「バーナンキ・プット」も当てにならない。積極的に集中投資を行う投資家は、今後起こりうる負の連鎖や見えないリスクに対応するために取引タームを短縮しデイトレード主体の運用に切りかえる局面であろう。相場の変動率が高いのでデイトレードでも十分収益が上がる環境にある。

投資家は利益をコントロールできない。しかし、損失はコントロールできる。相場はマネー・マネージメント、すなわち1に損切り、2に損切り、3、4がなくて5に損切りである。資産管理を怠らずに、しっかりシートベルトをしめて現在の乱気流相場に対応したい。