伝説の投資家ポール・チューダー・ジョーンズの「10の投資ルール」

 毎年8月と9月は、歴史的に見ても、さまざまな理由で市場が低迷するシーズンでもある。しかし、前述のようにすでに6カ月間にわたり市場のプラスが続いていることを考えると、大きな調整のリスクが高まっていると言える。

2010年以降、S&P500がマイナスとなった回数(月別)

出所:ゼロヘッジ

新大統領が就任して1年目の8~9月のリターンも低迷している

出所:ゼロヘッジ

 グローバルマクロのトレーダーとして大成功を収めた伝説の投資家ポール・チューダー・ジョーンズの投資ルールを改めて確認しておこう。

ルールその1:敗者から早めに手を引き、勝者を走らせる

 市場をうまくナビゲートするには、とてつもない謙虚さが必要だ。投資が思うように進まないときに、傲慢になることはない。大きなエゴに悩まされている投資家は、間違いを認めることができないか、自分たちがこれまでに生きてきた中で最も重要な株式投資家だと信じている。市場を生き抜くためには、自信過剰にならないようにしなければならない。

ルールその2:具体的な最終目標を持たずに投資するのは大きな間違いである

 投資をする前に、以下の2つの質問の答えを知っておく必要がある

1 自分の考えが正しければ、どのくらいの価格で売るか、利益を取るか?
2 間違っていたらどこで売るのか?

 希望と欲は投資のプロセスではない

ルールその3:感情的・認知的バイアスはプロセスの一部ではない

 投資(と財務)を以下に基づいて意思決定をスタートさせると悪い経験をするために自分自身を設定している

ルールその4:トレンドに従う

 ポートフォリオのパフォーマンスの80%は根本的なトレンドによって決定される

ルールその5:利益を損失に変えてはいけない

 投資とは、時間をかけてリターンを生み出すことだ

ルールその6:テクニカル分析がファンダメンタルズ分析をサポートすると、成功する確率が大幅に向上する

 市場は長い間ファンダメンタルズを無視することができる。投資すべき「いつ」を決定するためにテクニカルを適用することで、リターンを大幅に改善し、資本リスクをコントロールすることができる

ルールその7:負けているポジションを追加しないようにしよう

「アベレージングダウン(株価の低い時に買って平均取得価格を下げる:ナンピン買い)」のジレンマは、より収益性の高い投資に資本を再配置するよりも損失を回復しようとし、投資資本のリターンを減少させる。敗者(値下がり株)をショートにすることで、長期的にはより大きな成長を可能にする。

ルールその8:強気市場では「ロング」であるべき。ベアマーケットでは「ニュートラル」または「ショート」

 市場の主要な「トレンド」に逆らって投資することは、一般的に実りのない、もどかしい努力だ。世俗的な強気市場の間 - 株式のようなリスク資産に投資したままにするか、勝者を切り捨てる継続的なプロセスを開始する。弱気相場の間は、投資家は、目標とする資産配分に戻って、全体的なリスク資産の保有を減らし、現金を構築することを検討することができる。底打ちしたと信じて押し目を買おうとする試みや株式はこれ以上下落しないと思って購入することは一般的にうまくいかない。

ルールその9:リターンではなく、リスクを第一に考えて投資する

 私たちは、投資の潜在的なリターンを重視し、それを達成するために取ったリスクを余計なものとして扱う傾向がある。責任あるポートフォリオ管理の目的は、長期的にお金を成長させて特定の財務上のマイルストーンに到達し、それらの目標を達成するために取られるリスクを考慮することだ。ポートフォリオの大幅なドローダウンを防ぐための管理とは、ダウンサイドの大部分を捕捉することを防ぐために、アップサイドの一部を放棄することを意味する。ポートフォリオが壊滅的な損失を被っても、ポートフォリオはいつか元の状態に戻るかもしれないが、その間に失った貴重な時間は決して取り戻すことはできない。

ルールその10:ポートフォリオ管理の目標は70%の成功率

 メジャーリーグの打者は40%の成功率で「殿堂入り」する

(ポール・チューダー・ジョーンズ)

 ポール・チューダー・ジョーンズの運用の特徴は<徹底したリスク管理>にある。彼は、「私は失うことを前提に考える。獲得することに夢中になるのではなく保護することを第一に考える。最も重要なルールは攻撃ではなく防御である。どのリスクポイントで自分は撤退するのかを把握しておかなければならない。私は1カ月あたりの損失率を絶対2ケタにしない」と、発言している。

 相場はトレンド期が少なく、保ち合い相場やランダム相場のなかでは平均回帰という現象が起こってストップロス注文をいれなくても相場が戻って助かってしまうことも多いので、ほとんどの市場参加者はストップロス注文を置かない。

 ストップロス注文を置かなくても助かってしまうということを繰り返していると、レバレッジのかかった取引では<3年から10年に1回の大きな下げ局面>で証拠金の多くを失うことになるだろう。現物取引の場合でもポジションが塩漬けになる。

 いずれにせよ、「何もできず見ているだけ」という塩漬けの状態になり、<投資効率>が死んでしまうのだ。

 ポール・チューダー・ジョーンズが言うように、「どのリスクポイントで自分は撤退するのかを把握しておかなければならない」のである。

 チップが尽きたらゲームは終わり、である。