50歳代ないし60歳なら準備も現実的になる「日本版FIRE」

 55歳リタイアを軸に、簡単な試算をしてみます。55歳FIREであれば、25年の資産を作らなくてもよく(65歳以降は公的年金収入で日常生活費は一生涯まかなえる)、目標額を抑えられます。

 本来の老後に用いる「老後に2,000万円」の半分は退職金でまかなえるとして、1,000万円をまず確保、年400万円の10年分とすれば、ざっくりと5,000万円まで目標を下げることができます(リタイア後も運用はしますが、取り崩しは認めることとします)。

 30歳でFIREに共感し、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)で月2.3万円(企業年金なしの会社員)と、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で月3.33万円(年40万円の枠を使い切る)を25年間、積立投資します。

 元本が1,690万円ですが、運用は国内外への分散投資をバランス型ファンドで行うとして、利回り年4.0%を確保したとすれば、2,896万円まで増やせます。

 夫婦がそれぞれiDeCo、つみたてNISAを開設したとすれば、この2倍になりますから、5,793万円となり、30歳から目指して55歳時点でのリタイアを可能とするモデルになります。

「資産形成としての実現可能性」は十分にあります。ただし前提となるのは毎月の拠出を継続することでしょう。iDeCo月2.3万円を二人分、つみたてNISA月3.33万円を二人分、積立投資し続けることが必要ですから、合計すると月11.2万円にもなります。

 FIREを本気で目指している人からすれば当然クリアすべき貯蓄率でしょうが、普通の人にとってはなかなか高いハードルです。

 対策としては、次のことをしっかり行うことでしょう。

(1)ボーナスからつみたてNISA分くらいは夫婦がそれぞれ確保する
(2)家計の改善をしっかり行い、iDeCo分を夫婦それぞれ確保する

 年収の半分以上を貯蓄して40歳代のFIREを目指さなくても、55歳もしくは60歳のリタイアは、十分に魅力のあるリタイアになるのではないかと思います。

 今、30歳代もしくは40歳代で「FIREは若者のチャレンジで、もうオレは対象外か……」と思っている人も、もう一度、心に炎をともして(FIREだけに)、早期リタイアの夢にチャレンジしてみてはどうでしょうか。

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