FIREチャレンジを最初から諦めてしまう理由の一つは「40歳代」というキーワード
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「FIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期リタイア)」というブームに興味を持つ人は多いと思います。しかし、何割かの人は、すぐに断念しているようです。断念の理由は「年齢」ではないでしょうか。
海外のFIRE本では、30歳代ないし40歳代で早期リタイアに突入する事例が紹介されています。これはつまり、新社会人になってから真剣に資産形成を行うことが必要になります。
30歳代あるいは40歳代で早期リタイアに興味を持った人の多くは「自分はもう、遅いのか」となってしまいます。
また、徹底的な節約をアドバイスされ、そのストイックさに打ちのめされる人もいます。年収の20~30%を節約するなら、なんとかチャレンジしてみようと思えても、50~70%と言われては「これは無理だ」と諦めてしまう人もいるはずです。
実はこれ、「FIREに対する思い込み」かもしれません。
確かに40歳FIREは難易度が高い、20歳代前半で出遅れたら実現不可能
改めて、40歳FIREの難易度について説明してみましょう。
準備期間はまず短くなります。22歳新卒から一気に目指しても、なお20年ありません。18年という短い時間で25年分の年収を確保しようというわけですから、1年の年収で1年分の生活費を得ようという試みになります。
運用益に高く依存するとしても、やはり年収の半分くらいを貯める覚悟が求められますし、30歳くらいで気がついても、時間はもう足りないということになります。さすがに1年分の年収から2年分の生活費確保は不可能です。
キャリアを冷静に考えても、20歳代序盤で高所得を獲得しようということになります。それこそキャリアアップを一度も失敗せず、下積みの期間もほとんどなく、1,000万円を目指すようなイメージです。
30歳代でじっくりキャリア形成をするようなパターンでは40歳FIREには到達できません。
目標が高いのも難点です。一般的FIREの目指す「25年分の生活費」というのは極端な話、40歳から運用収益がなくても65歳まで保つということですが、年収400万円の生活を設定しても1億円という高い目標設定が求められます。
準備額が高く、高年収の獲得は苦労があり、高い貯蓄率設定のための徹底的節約というセットが求められ、そもそも40歳リタイア実現というのは、かなりハードルの高い夢です。
そうなると、お金についての意識を持ち始めた30歳代からでは、FIREは不可能なのでしょうか。
世界でも長生きの国、日本でFIREを考えるなら「55歳」「60歳」でも十分
「日本版FIRE」についてはいくつかのアレンジがあってもいいと思います。具体的には「リタイア年齢を少し引き上げてみる」ことと、「資産の取り崩しをある程度認める」ことです。
今回のコラムで指摘しているのは「リタイア年齢の引き上げ設定」です。
日本は世界的にも長寿国であり、まだまだ日本人の寿命は伸びると見込まれています。平均寿命だけは将来予測を上回る伸びが続いており、人生100年時代は多くの人の現実になりえます。
だとすれば「50歳FIRE」でも50年のリタイア期間を得ることができます。70歳まで働ける社会への移行も始まっていることを考えれば、「60歳リタイア」を設定しても、人より10年早い引退生活スタートになると思われます。
今、30歳代から40歳代の人たちが、20年ほど資産形成を続けたとすれば、50歳代もしくは60歳でのリタイアは、十分に早い引退生活への突入として評価されることになるでしょう。
50歳代ないし60歳なら準備も現実的になる「日本版FIRE」
55歳リタイアを軸に、簡単な試算をしてみます。55歳FIREであれば、25年の資産を作らなくてもよく(65歳以降は公的年金収入で日常生活費は一生涯まかなえる)、目標額を抑えられます。
本来の老後に用いる「老後に2,000万円」の半分は退職金でまかなえるとして、1,000万円をまず確保、年400万円の10年分とすれば、ざっくりと5,000万円まで目標を下げることができます(リタイア後も運用はしますが、取り崩しは認めることとします)。
30歳でFIREに共感し、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)で月2.3万円(企業年金なしの会社員)と、つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で月3.33万円(年40万円の枠を使い切る)を25年間、積立投資します。
元本が1,690万円ですが、運用は国内外への分散投資をバランス型ファンドで行うとして、利回り年4.0%を確保したとすれば、2,896万円まで増やせます。
夫婦がそれぞれiDeCo、つみたてNISAを開設したとすれば、この2倍になりますから、5,793万円となり、30歳から目指して55歳時点でのリタイアを可能とするモデルになります。
「資産形成としての実現可能性」は十分にあります。ただし前提となるのは毎月の拠出を継続することでしょう。iDeCo月2.3万円を二人分、つみたてNISA月3.33万円を二人分、積立投資し続けることが必要ですから、合計すると月11.2万円にもなります。
FIREを本気で目指している人からすれば当然クリアすべき貯蓄率でしょうが、普通の人にとってはなかなか高いハードルです。
対策としては、次のことをしっかり行うことでしょう。
(1)ボーナスからつみたてNISA分くらいは夫婦がそれぞれ確保する
(2)家計の改善をしっかり行い、iDeCo分を夫婦それぞれ確保する
年収の半分以上を貯蓄して40歳代のFIREを目指さなくても、55歳もしくは60歳のリタイアは、十分に魅力のあるリタイアになるのではないかと思います。
今、30歳代もしくは40歳代で「FIREは若者のチャレンジで、もうオレは対象外か……」と思っている人も、もう一度、心に炎をともして(FIREだけに)、早期リタイアの夢にチャレンジしてみてはどうでしょうか。
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