確かに40歳FIREは難易度が高い、20歳代前半で出遅れたら実現不可能

 改めて、40歳FIREの難易度について説明してみましょう。

 準備期間はまず短くなります。22歳新卒から一気に目指しても、なお20年ありません。18年という短い時間で25年分の年収を確保しようというわけですから、1年の年収で1年分の生活費を得ようという試みになります。

 運用益に高く依存するとしても、やはり年収の半分くらいを貯める覚悟が求められますし、30歳くらいで気がついても、時間はもう足りないということになります。さすがに1年分の年収から2年分の生活費確保は不可能です。

 キャリアを冷静に考えても、20歳代序盤で高所得を獲得しようということになります。それこそキャリアアップを一度も失敗せず、下積みの期間もほとんどなく、1,000万円を目指すようなイメージです。

 30歳代でじっくりキャリア形成をするようなパターンでは40歳FIREには到達できません。

 目標が高いのも難点です。一般的FIREの目指す「25年分の生活費」というのは極端な話、40歳から運用収益がなくても65歳まで保つということですが、年収400万円の生活を設定しても1億円という高い目標設定が求められます。

 準備額が高く、高年収の獲得は苦労があり、高い貯蓄率設定のための徹底的節約というセットが求められ、そもそも40歳リタイア実現というのは、かなりハードルの高い夢です。

 そうなると、お金についての意識を持ち始めた30歳代からでは、FIREは不可能なのでしょうか。

世界でも長生きの国、日本でFIREを考えるなら「55歳」「60歳」でも十分

「日本版FIRE」についてはいくつかのアレンジがあってもいいと思います。具体的には「リタイア年齢を少し引き上げてみる」ことと、「資産の取り崩しをある程度認める」ことです。

 今回のコラムで指摘しているのは「リタイア年齢の引き上げ設定」です。

 日本は世界的にも長寿国であり、まだまだ日本人の寿命は伸びると見込まれています。平均寿命だけは将来予測を上回る伸びが続いており、人生100年時代は多くの人の現実になりえます。

 だとすれば「50歳FIRE」でも50年のリタイア期間を得ることができます。70歳まで働ける社会への移行も始まっていることを考えれば、「60歳リタイア」を設定しても、人より10年早い引退生活スタートになると思われます。

 今、30歳代から40歳代の人たちが、20年ほど資産形成を続けたとすれば、50歳代もしくは60歳でのリタイアは、十分に早い引退生活への突入として評価されることになるでしょう。