日本は低成長下で公的債務拡大に対処できるか

 日本株が米国株や外国株に劣勢となってきた要因としては、国内の経済成長期待が相対的に停滞していることが挙げられます。日本は、いまだ「世界第3位の経済大国」(名目GDP[国内総生産]ベース)です。

 しかし、2019年10月に消費税率を引き上げた影響で個人消費支出が停滞していたなか、2020年春のパンデミック・ショックで移動制限と消費活動(対面サービス活動)自粛を余儀なくされ、本年に入ってもコロナ禍からの脱却が遅れ、経済活動は(外需や一部生産活動・設備投資を除き)低空飛行です。

 図表2は、主要国(地域)の実質GDP成長率の実績と見通し(市場予想平均)を比較したものです。

 日本の成長率はコロナ危機前の2019年から低調で、2020年に大幅なマイナス成長を余儀なくされ、2021年や2022年にプラス転換しても低成長とみられています。こうした経済の相対的な停滞が続くと、「日本は成長しない国」との印象を外国人投資家に与えかねません。

<図表2:日本の成長率見通しはコロナ危機前から劣勢>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2021年6月16日)

 人口が多ければ、一人一人の生み出す「付加価値」が低くても、合計値であるGDPは大きくなります。ただ、2000年代に入ると日本の総人口は減少に転じ、少子高齢化で生産年齢人口(15歳~64歳の働き手)が減り始めました。一方、日本のGDPに対する公的債務残高比率は260%に迫っています(図表3)。

 経常収支黒字(2020年は約17兆円の黒字)、国内の政府純資産(約600兆円)、対外純資産(約360兆円)がいまだ大きいことや「財政ファイナンス」(日本銀行による間接的な国債買取り)期待で公的債務問題を軽視する議論もあります。

 ただ、財政再建を目的とした将来の増税や社会保障費負担増加を見越す先行き不安が個人消費を抑制しているとされます。

「アベノミクス」(前・安倍政権下の経済政策)は、「成長なくして財政再建なし」と訴えました。しかし、規制緩和や官民のデジタル化が遅れ、労働生産性の伸びが低いなか、デフレ色が根強い経済環境下で労働者は総じて所得増加を期待しにくい環境です。

 こうした厳しいマクロ環境を勘案し、「資産形成」では日本株など国内資産だけにたよらず、外国株式や外国資産への「国際分散投資」を進めていくことが合理的と考えられます。

<図表3:日本の公的債務膨張を軽視できるのか>

出所: IMF(国際通貨基金)の調査・予測より楽天証券経済研究所作成(2000~2021年)