我々はこの大変化の始まりのなかで何をすればいいのであろうか?

 日本経済新聞社の前田昌孝氏によると、「株価がインフレに勝つかはケースバイケースでデータからは正解がない」(日経新聞電子版 「マーケット反射鏡」と2021年6月9日)という。

 ハイパーインフレに見舞われた国、例えばベネズエラは消費者物価指数が26兆2,905億倍になったのに、株価指数は24兆9,830億倍にとどまった。アルゼンチンは物価が11.92倍になったが、株価指数は42.88倍になった。一方で、ギリシャ危機の時はインフレと株価が連動しなかった(この時は株が暴落してから金利が上がるという展開だった)。

 筆者は、自国通貨ベースでは株はインフレのヘッジになると考えている。ただし、金融危機が起きると、インフレと株が連動する前に、株も全部売りに巻き込まれて急落する可能性がある。

 西側民主主義国の政府自体が社会主義化する中での運用というのは前代未聞のことである。「非常に多くの投資家がバイデン政権の超緩々な(「頭がおかしなくらい緩い」という人も)財政政策に注目している」というが、マーク・ファーバーが言うように、「今や西側民主主義国では民間企業の営業活動を条件づけるために資本主義体制を展開・規制している」とみるのが順当だ。それは純然たる社会主義計画と大した違いはないのである。

 運用の究極の目的はインフレヘッジだ。現金が紙くずになってしまってはどうにもならない。我々はこの大変化の始まりのなかで何をすればいいのであろうか?

 前田昌孝氏が言うようにインフレヘッジ運用に答えはないのかもしれない。しかし、その中で取りうる戦略が一つだけある。それは「分散投資」である。

マーク・ファーバーはFRBがお金を印刷し続けるだろうという結論に達した

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ジェフリー・ガンドラックの資産分散の提案

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 マーク・ファーバーとジェフリー・ガンドラックという長期に市場の中で生き残ってきた投資家が、これからの運用戦略に対して奇しくも同じことを言っている。

 債券王ジェフリー・ガンドラックが、「今後の先行きは全くわからないし、結構過激に変わる可能性があるので私の助言は極端に投資を分散させることだ。こんなことは今まで勧めた事は無い」と述べているように、これまでにない不確実性の時代を我々は生きているのである。

 バイデン政権は今回の英国でのG7サミットで、G7諸国を巻き込んで中国とロシアに対して包囲網を作ろうとした。しかし、欧州との温度差を感じるばかりで全くG7自体が機能していない。米国と中国の板挟みの中で、今後、欧州や日本は困難な状況に追い詰められていくだろう。

 米国のG7での中国包囲網に対抗して、中国は「反外国制裁法」を即日施行した。この恐ろしい法律を盾にした報復は、これまでの中国にはなかった態度である。

 それは、もう経済的にも中国企業が欧米企業より優勢になっているからだ。欧米企業は中国なしではもう有望な市場がない状態になっている。二枚舌外交の英国などは、中国に制裁をするふりをして、中国に航空機や軍事部品を売り続けている。米国が武漢のウイルス研究所に裏でカネを出しているのと同じ構図である。まったく、茶番もいいところだ。

 筆者はバイデン政権が誕生すれば、米国の衰退が加速すると述べてきた。マスコミや世間が、「中国はとんでもない」、「中国はけしからん」と言っている間に、中国はどんどん覇権国家として台頭していくだろう。米国も欧州も日本も、独裁国家の中国に対して具体的になにもできないからだ。この状況が煮詰まってくると、やがて戦争に発展する可能性が高まる。

 世界を見つめてごらん。きっとキミの信じているものすべてが壊れていく時が迫っている。

米国の「帝国のサイクル」の現在の位置

米国と中国の帝国のサイクル

出所:レイ・ダリオ(リンクトイン)

帝国の相対的な地位の見通し

出所:レイ・ダリオ(リンクトイン)