市場変更や株主優待に関連するイベント投資を実践

──実際、東証1部に昇格しそうな銘柄を購入したのですか。

 はい。ただ、その本が私に与えた影響はそれだけではありません。

 普通、私たちは会社の業績や財務、あるいは株価の推移などをチェックして、株価が上がるかどうかを予想しますよね。でも、その本には、会社の業績などとは関係なく、何かの出来事、つまりイベントをキッカケに株価が上がることがあると、数値から明らかにしたのです。

──そういう出来事を機に利益を狙うのがイベント投資というわけですね。銘柄の市場昇格以外にはどんなイベントがあるのでしょうか。

 その頃、僕が発見したのが、株主優待にまつわるイベント投資です。

 当時、居酒屋チェーンを展開する三光マーケティングフーズという銘柄を優待目当てで保有していたのですが、あるとき、これが優待の権利確定日に向かって株価が上昇し、確定日を過ぎると下がることに気づいたんです。

 考えてみれば当たり前ですよね。権利確定直前に株を買い、優待をもらったら売却する人がいても不思議ではないですから。それで、株主優待銘柄の権利確定日を調べ、その前に買うということを始めました。

──今では広く知られる手法ですが、最初に始めたのは夕凪さんだったのでは?

 いえ、そうではないと思いますよ。たぶん僕と同じようなことをやっていた人は大勢いたと思います。ただ、当時は今のようにSNS(交流サイト)が普及していたわけではないですからね。ブログやツイッターで投資情報を発信している人なんて、ほとんどいなかった。だから、世の中に広く知られることがなかったのでしょう。

──当時、「クロス取引」も行っていたんですよね。

 現物取引で買って、同時に同じ銘柄を信用取引で売り建てを行えば、株価の値下がりリスクを回避して、優待分だけ獲得できるかもと思いつきました。

 板寄せとなる寄付では売り注文と買い注文が必ず同じ株価で約定することをルールブックで確認しましたし、信用売り側が優待分の価格負担がないことを証券会社に電話で確認しましたね。

 当時は適時開示情報のページも存在しなかったので、株主優待を実施している企業を探すのにも苦労しました。

──今では一般的な投資術ですが、自分で検証して始めたのはスゴイですよね。

 子供のころから、物事のカラクリを探ったりするのが好きだったんです。

 じっと観察して、コインゲームでお店側が勝てるようになっている仕組みがどこにあるのか、もし、その仕組みが甘くなっている台を見つけたら、そこでコインをたくさん増やせるんじゃないかとか。実際に仕組みが甘くなっている台を見つけて、自分だけでは使いきれないくらいコインを増やしたこともありました。

 投資も同じで、じっと観察して、もっといい方法はないか、勝てる方法はないか、どこかにルール上の甘い部分がないかと常に考えていました。だからこそ、いろいろ頭に浮かんだのでしょうね。