TOB銘柄に集中投資!一気に資産増へ

──他にどんな「イベント」を狙うのですか。

 一つはTOB(株式公開買い付け)です。

 TOBとはある会社が、他の会社の株の一部、またはすべてを買い付けることをいいますが、通常は現在の株価にプレミアムが上乗せされるため、TOB発表前に買っておくと、まとまった利益を得られることが多いんです。だから、TOBの対象になりそうな銘柄を狙います。

──実際、TOB狙いで利益を得たこともありますか。

 もちろん、ありますよ。イベント投資を始めて4、5年後だったと思いますが、大手電機メーカーのNECが、電子部品の製造販売を手掛けるNECトーキン(現在はトーキン)という会社を、完全子会社化するというニュースを知りました。

 当時、リーマン・ショックの影響で経営不振に陥っていて、株価は150円くらいまで下がっていました。ただ、この会社は大手自動車メーカーが必要とする電気自動車用の電池の開発も行っていたんです。つまり、将来有望な技術を有していた。とすれば、NECトーキンは見捨てることのできない絶対的な存在の会社で、どこからも文句を言われないように、NECはそれなりの値を付けるだろうと思いました。

──思惑通りにいったわけですね。

 1株150円で買ったものが240円くらいになりました。というと、大もうけしたとは思えないかもしれませんが、あのときは銘柄に対する思い込みがすごくて、投資資金のほぼ全額をその銘柄に注ぎ込んだんです。だから、かなり大きな利益を得ることができました。

──フルポジション? 同じように一つの銘柄に全額投資することもあるのですか。

 今はしないですよ。万が一のことを考えるとリスクが大き過ぎますから。ただ、当時は全額といってもたいした金額ではなかったし、リスクに対して無とん着で、多少は無茶をすることもありました(笑)。

──イベント投資を始めてから成績はどうだったんですか。

 よかったですよ。最初30万円で始め、その後は毎月5,000円ずつ追加投資しました。2~3年後にはかなりまとまった金額になったので、追加投資する必要はなかったのですが、しばらく惰性で続けていました。入金額は合計100万円にも満たないくらいですが、数年後には2,000万、3,000万円まで増やすことができました。

──資産が増えたから、会社を辞めて、専業投資家に転身されたわけですね?

 いえ、お金が貯まったから辞めたわけではないんです。というか、2,000万円、3,000万円で会社を辞めるのは少し無謀かなという思いがありました。

──では、なぜ?

 人事異動があり、とても忙しい部署に移ることになったんです。当時、僕は1日のうちかなりの時間を投資に費やしていたんですね。イベント投資というやり方だと、それなりに情報収集が必要ですし、けっこう頻繁に売買しますし。つまり、新しい部署に移ったら、投資を辞めざるを得ない。だったら、これを機に専業投資家になろうと。

──不安はなかったのですか。

 いや、ありましたよ。実は会社を辞めると決断した後、東日本大震災が起こり、保有していた株が暴落したんです。東日本大震災は2011年3月11日ですよね。3月は株主優待権利銘柄が多いので買いまくっていました。それらが軒並み下落して、かなりの損失を出しました。それもあって、今、会社を辞めて本当に大丈夫なのだろうかと、あせったときもありました。

──でも、退職を決断されたわけですね。

 僕にとって投資は生活の一部になっていたし、投資をやめるのは考えられなかったんです。それに、今回の人事異動は神様の思し召しではないかと考えたんです。神様が、僕が投資家に向いていると見抜き、会社を辞めるように仕向けたのではないかと。まあ、勝手な解釈ですが(笑)。それなら挑戦してみようじゃないかと思ったんです。

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